Dearest @

□第6話
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「……。ううん、リタは大人だなって……。」


「……そうか?」


「悩むことは無いんです?躊躇うとか……。」


「何も傷付けずに望みを叶えようなんて悩み、心が贅沢だから出来るのよ。」


本当、リタは大人だ。普通そんな風には考えられない。


私は……傷付くのが怖かった。
助けを求められないのが苦しかった。


それを押し殺して世界再生の旅を続けても……結局何も得られなかった。


世界を救えなかった。


「……心が贅沢。」


「でも、それでリタが傷付いて……結局何も得るものが無かったら?そんなの……空しいだけだよ。」


「……レオナ?」


そう呟いたレオナは泣きそうになりながらリタを見つめていて……。


「魔導器はあたしを裏切らないから……絶対に……。」


そう言うとリタは先に歩いて行ってしまった。


「なんか、リタって凄いです。あんなにきっぱりと言い切れて……。」


「そうだね……。リタは強いね。」


何も得るものが無くても……自分を背責めることも無く、魔導器させも信じ続けている。


私には出来なかったから……。


「何が大切なのか、それがはっきりしてんだな……。」


「私は、まだその大切が良く分かりません。」


「適当に旅して回ってりゃあ、その内嫌でも見つかるって……。」


ユーリの言った言葉にエステルは頷き、リタやカロル達を追いかけて行ってしまった。


「……レオナ?置いて行かれるぞ……。」


「ユーリ……。私にも見つかるかな。こんな私にも……。」


「……?」


「ごめん、行こうっ!」


儚く笑うレオナに、ユーリは何もいう事が出来ず……。


それを見たレオナは困ったように微笑むと、彼女たちを追って奥へと進んでいった。








「何やってるの……?」


後を追いかけたレオナは少し進んだ所でリタが悩んで腰を曲げているのを発見し近づく。


「この子……駄目か。」


「発掘前の魔導器ってこんな風になってんだ……。」


リタは掘り起こされている魔導器を見つめ、残念そうに呟いた。


この事はカロルも知らんかったようで、食い入るようにリタの視線の先にある魔導器を見つめる。


「大昔の人は何を思って、魔導器を遺跡に埋めたんでしょう?」


「さぁね、その辺の事は今も研究中よ。」


「こんだけあるなら、水道魔導器も落ちてねぇかな……。」


ユーリが後ろからやって来て、下町の魔導器の代わりになりそうなものが無いか探すが全て魔核が無いようで動かない様だ。


「……魔核も筐体も完璧なんて魔導器、そうそう発掘されないのよ。」


「術式により魔術を発現するW魔核W、その魔術を調整するのがW筐体W。両方が揃って魔導器と呼ぶ。

魔導器はそれぞれ異なった性能を持ち、その性能を表す紋が魔核上に浮かぶ。現代技術で筐体の生産は可能だが、魔核は再生不可能である。……です。」


「……へぇ。」


ハルルではそこまで詳しく聞いていなかったため、興味深そうにレオナはエステルの説明を聞いている。


「要するに発掘品を使うしかない魔核は貴重って訳だ。泥棒が盗むのも当然だな。」


「……そうでもないよ。エステリーゼの言った本の内容はちょっと古いの。」


「……古いってどういう事?」


「発掘品より劣化はするけど、簡単な魔核の復元は成功してる。」


「……本当ですかっ!!」


簡単な魔核の復元……かぁ。


女神マーテルが言っていた事と関りがあるのかな。


「だから、あたしなら盗みなんてバカな真似はしない。そんな暇があるなら、研究に時間を費やすわ。

完全に修復するためにね……。それが魔導士よ。」


自信たっぷりに言い放つリタを見つめ、険しい顔をするユーリ。


「立派な信念だよ。けど、それで疑いは晴れないぜ。」


「でもリタは、そんな事するような……。」


「……いいわよ、レオナ。口では何とでも言えるしね。」


そう哀し気に呟いたリタと共に、重苦しい雰囲気の中さらに奥へと足を進める私達。








「あ、こっちのは魔核が残ってるよ。」


そこには結構な大きさの魔導器が置かれていて……。


「この魔核、コレ使って撃ってみて。」


それに気がついたリタはポッケから淡く光るブレスレットを取り出すとユーリに差し出した。


「このリングに付いてるの、魔導器の魔核と同じものだな。」


「術式を文字結晶化する事で、必要に応じてエアルを照射する魔導器……WソーサラーリングW。」


シルヴァラントにも同じようなものがあったなぁ。


封印を解くために仕掛けを解除しながら進んだ遺跡で使ったことがあり、それに似ている。


ユーリはそのエステルの説明を聞きながらブレスレット……ソーサラーリングを腕にはめる。


「その説明、ちょっと違う。照射して魔導器にエアルを充填させる、が正解よ。ってあんた知ってるの?」
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