東風谷早苗の兄
□一章
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東風谷早苗は悩みを抱えていた。それは自分の兄の事だ。兄は黙っていればイケメンで気さくで話しやすく、とてもいい人だ。これだけなら何も問題点はあるはずがない。しかし、兄は…
「早苗〜!」
重度のシスコンなんです……。心配してくれるのは嬉しいけど…ここまでされると…逆にうざい…そんな事を遠回しに言うといつも前向きに捉えられてしまう。それが兄のいい所でもあるし、悪い所でもあると思う。
「お兄ちゃん…もう一人で行けるからさ、ついてこないで」
「早苗に悪い虫が付いたら大変だ!!ついていく!」
…はぁ…神奈子様も諏訪子様も何も言わないし……恋をしたいお年頃なのに…兄のせいでなかなかできないし……
「…大丈夫だってば!悪い虫なんていないし!人里に買い出しに行くだけだし!荷物もそこまで多くないし、大丈夫だよ!」
そう言って返事も聞かずに人里に買い出しに行く。全く……私の恋を邪魔する暇があるのなら自分の恋を見つければいいのに!もう子供じゃないんだから。一人で買い出しにだって行けるし、ほとんど自分の力で出来るのに…
「……ねぇ、お嬢ちゃん」
「……へっ?」
ニヤニヤと含み笑いをするおじさん二人が立っていた。…え、気持ち悪っ…とは言えずとりあえず話す。
「なんでしょうか?」
「毎日毎日大変だねぇ。あのシスコン兄貴から逃げる日々は」
「えぇ……まぁ…」
曖昧な返事を繰り返す。警戒しておこう。いつでも逃げれる準備を…
「…だから、おじさん達がストレスを解消させてあげるよ。だからこっちに…」
「え……!?」
腕を掴まれ、無理矢理連れていかれる。そして押し倒される。え…なにこの状況…
「グフ…流石守矢の巫女だ。いい身体をしている。これなら…」
そう言っておじさん達はズボンを…脱いでいる……え、怖い…神奈子様…諏訪子様…文さん…お兄ちゃん……!助けて…!と、思ったそのとき……
ドコォン!
家の屋根が崩れた音がした。
「え…!?」
おじさん達もびっくりしたかのように屋根を見る。そこには…
「…早苗になにをしているのかなぁ?」
笑顔ではあるが全然目が笑っていない兄と怒りのオーラを放っている神奈子様と諏訪子様の姿があった。
「ひっ……」
おじさん達は顔を引きつらせ、逃げていく。しかし…捕まるのも時間の問題であろう。
「大丈夫か!?早苗!」
神奈子様はそう言って早苗を抱きしめる。なんだか、子供扱いぼかったけど…それでもいい…今は…ただ…涙が溢れ落ちる。怖かった。
「泣いていいよ。全部受け入れてあげるからさ」
諏訪子様はそう言って私の頭を優しく撫でる。更に泣いてしまう。そこには先の恐怖はない。暖かい温もりだった。