初夏のころ、八葉の任務を終えて熊野に戻ってきたヒノエは本宮で以前の生活を送っていた。
そして熊野に戻って来てから半年の歳月が経ったが、一向に連絡のないところを見てヒノエはため息をついた。

気分転換に御浜へ来ていると、しばらく眺めていた後にある人物がヒノエを訪ねてきた。

「ヒノエ、そんなところに居たんですね、探しましたよ。」

ヒノエは聞きたくない声が聞こえると、小さくため息をついて1度軽く瞳を閉じた。
すぐに瞳を開けてそれを無視するかのように、ヒノエは踵を返して返事をしようとせず、その人物の隣を通り抜けようとした。
隣を黙って通り過ぎようとしているヒノエの片腕を軽く掴んで、歩く足を止めようとした。

「ヒノエ、聞こえているのでしょう?返事くらいしたらどうです。」

ヒノエは足を止めざるを得なかったが、それでも返事をしようとかしなかった…あれからずっと音沙汰無しだったから。

「ヒノエ。」

再び名前を呼ばれるとヒノエは小さく反応するかのように身体を揺らすも、すぐに掴まれた腕を振り払った。

「ずっと、あんたが連絡してこないからだろ…弁慶。あれから全く音沙汰無しだっだしね。」

ヒノエはどこか拗ねたように悪態をついて、そのまま顔を逸らして弁慶に背中を向けた。

「ふふ、すみませんでした。なにしろ忙しかったもので…。」

弁慶は困ったように笑いながら、小さく息をついてヒノエを背中から抱き締める。
すると、ヒノエは弁慶の腕の中から抜け出そうとして軽く暴れだした。
しかし弁慶はそんなヒノエを離そうとはせず、むしろ逆に抱き締める腕の力を強めた。

「ちょっ、離せ!誰か来たら、どうす…っ!?」

ヒノエは顔を弁慶の方に向けて軽く睨みつけ、声を荒げるが最後まで言葉が続くことなく遮られてしまった。
弁慶がヒノエの唇を自分の唇で塞ぎ、言葉を続けるのを阻止した。
一瞬、ヒノエは何が起こったのか分からなかった…何故、こんなことになっているのか、そんな事を考えながらヒノエの唇は解放されていった。

「これで静かになりましたね。」
「…っ。」

弁慶は何もなかったように涼しい顔をしていたが、ヒノエはそれとは逆に頬を微かに紅潮させていた。
そして、弁慶はそんなヒノエの片手を取り御浜から本宮へと戻り始めた。
ヒノエは弁慶の手を軽く握り返しながら、軽く俯いて後を追うように歩いて行った。









ずっと追い続けた背中
ずっと待っていた姿

いつまでも一緒に居たい…
 そう 願い続けていたのだ














待ち続けた背中
[完]


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