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□始まりの音。
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「マスターたち、上手く伝えられてるかな?」


窓の外を見つめ続けていたカービィが呟く。
外はどんよりと曇っていて、どこか空気が重たく見える。
まるでカービィの心配ごとを表しているような空を見ていると、俺の方まで気分が重たくなってしまいそうだった。

「ねぇマリオ、聞いてるの?」

怒ったように口を尖らせて、カービィは振り向いた。
その顔には心配とか、不安とかがありありと現れていて何とも言えなくなってしまう。

「聞いてるよ。…聞いているとも」

ただ、その疑問の答えを見つけられなかっただけだ。
言えなかった言葉をぐっと飲みこんで、俺はカービィの隣に立つ。

「ただ、あの兄弟のことだ。多少なりとも衝突はあるはずだ。」

わかるのはそれだけだった。
世界の管理者を名乗るあの兄弟は、少し偽悪的になりすぎてしまうことがある。
俺たちはあの兄弟が本当は優しいことを知っているが、新しい彼らは知らない。
きっと知らないままあの兄弟の言葉を真に受けてしまうだろう。
あの兄弟の言葉はとても鋭い。
その鋭さが新しい彼らの心を傷つけすぎてしまうのではないかと、俺たちは不安だった。

「…僕は、彼らにできることってあるのかな?」

カービィも新しい彼らのことを思い口を開くが、先ほどと同様返す言葉は見つからない。
それでも何も言わないよりかは、と苦し紛れの言葉を口にする。

「さぁてね。…あの事実だけはどれだけ言葉を尽くしても、本人が納得できなきゃ意味がないんだよ」

俺たちは限りなく本人に近いが、所詮は模造品。
俺たちも経験してきた、苦くて辛い真実だった。

俺もカービィに倣って、外を見る。

外は分厚い雲に覆われた空が浮かんでいて、いっそのこと雨が降ってしまえばいいのにと思う。
今日という日に曇り空をチョイスしたあの兄弟は、一体どんな気持ちで天気を選んだのだろうか。
素直に感情を表すことのできない新しい彼らには、きっと雨がぴったりだというのに。

「…そうだけどさ、何かできることがあったらいいのにね。」

「あいつらがちゃんと理解して受け止められたら、隣にいてやればいいのさ。」

「…はぁ、何もできないのが本当に辛いね。」

カービィは窓の外を一瞥して、ぽつりと呟いた。

「雨、降ればいいのに。」

外はカービィの言葉なんて知らぬというように、曇り空を維持し続けていた。
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