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□恥ずかしがり屋さん
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「ねーえ、レトさん」

「…な、何や」

PCに向かって作業をしていたレトさんの膝の上にごろりと頭をのせる。
下からレトさんの頬を撫でてやると、それだけで初々しくビクリ、と肩を震わせた。

「構ってよ。寂しいじゃん?」

「し、知らんわ!ていうか邪魔すんなや…」

ドギマギしながら言葉を紡ぐレトさん。
付き合いはじめて一ヶ月と少し。
手を繋いだ。ハグをした。そしてキスをした。

それらのどの行為に及ぶ時も、レトさんはガチガチに緊張していた。
声は上擦るし、顔はこれ以上ないくらい真っ赤だし、汗もすごい。

…童貞感丸出しじゃねーか。

異常なくらい意識しているレトさんは俺を膝枕している今も、顔が真っ赤で声は震えている。
もう一ヶ月も経つ。全て慣れろと言っている訳では無い。
せめて触れるくらい慣れてくれ。

「あのさ、意識しすぎじゃね?そんな気張らなくていーじゃん。」

「べ、別に!?意識なんかしてないし!?」

うっわ、わかりやす。ネタかよ…
さっきまでそんな背筋伸びてなかっただろ。

「俺といたらそんな落ち着かない?」

「そ、そんなんちゃうし…落ち着いてるよ」

そう言い張るレトさんの耳に手を伸ばし、緩く撫でる。
真っ赤だよ、と囁くように言うとビク、と身体を震わせる。

「…だって、緊張するんやもん。」

「そんなんじゃいつまで経っても先進めねーよ?レトさん緊張し過ぎて死ぬかもじゃん。」

さ、先!?とか何とか驚いてゴニョゴニョ吃る。中坊かよお前は。

「そんなとこも可愛いけどさ?ちょっとずつ慣れてよ。」

「ん…わかってるけど…」

目線を逸らしきまりが悪そうにするレトさん。両手の指を絡ませくるくると動かす。
あ、そーだ。いいこと思い付いた。

「レトさんからキスしてみてよ。」

「ふ、ぇ?キス…?」

驚愕し、目をぱちぱちと瞬かせる。俺の言葉をゆっくりと理解したレトさんはぷしゅーと湯気が出るほどに、まるで真っ赤な茹でだこだ。

「そんなん出来るわけないやん!?アホちゃう!?」

「アホじゃねーよ。俺ら付き合ってんだよ?たまにはレトさんからもされたいんだけど?
レトさんいつも恥ずかしがって好きとか言ってくれないしさー。あー俺寂しいなぁ、愛されてないのかなぁ。」

態とらしくうっうっ、と泣き真似をするとレトさんは困ったように慌てる。

「わ、わかった、わかったから…それは、ほんとごめん、なさい…」

「いいよ、いいからキスして。」

けろりとくだらない泣き真似をやめ、レトさんに顔を近づける。
腹を括ったのか、ゆっくりレトさんの手が俺の頬に触れる。

じん、と暖かい手のひらの温度。どんだけ緊張してんだよ、ちょっと湿ってんじゃん(笑)
まーそんなとこが可愛いし、そこも含め好きだけどね、なんて。
言ったらまたレトさんは照れ隠しに悪態を付くだろう。

そっとレトさんが触れるか触れないかのところまで近付いてきて、俺は目を瞑る。
ちょこんと少しだけ、触れるだけのキスが一瞬 俺の唇に落ちた。

目を開くとそこには目尻に涙を浮かべ、真っ赤に染まったレトさん。
あー、可愛すぎかよ。なにこの生物。
じっとレトさんの真っ赤な顔を見つめる。

「な、何か言ってよ」

「んー、可愛い。好き。」

「… 俺も、好き。」

小さく口を開いて漏れた好きの文字が宙に浮かんで揺れる。
俺の胸で顔を隠す可愛い恋人の頭を撫でた。

細い髪の毛に指を通すと、ふわりとシャンプーの匂いがした。


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