赤井

□降谷さんルート 最終回
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あの日私ははぐらかすように彼等を追い出した。

通り雨。
傘を持っていなかった私は自宅マンションもすぐそこなのでまあいいかとあきらた。
帰ってすぐシャワー浴びよう、はやく家に着けなどと考えていると白のスポーツカーが真横に止まる。
助手席のドアが開くと明るい髪色に褐色の肌、タレ目の青い瞳。スウィートフェイスの超絶イケメンが運転席から身を乗り出し驚いたように見上げていた。

「なにをしてるんだっ、はやく乗れっ」

「どちらさまですか?」

言い残し歩きはじめるとおいっ!とドアの閉まる音がして雨に濡れたアスファルトの上を走る音が聞こえると肩を掴まれた。

「なんですか?傘も結構です」

「いや、持ってない、、、」

持ってないんかい。
不貞腐れたように唇を尖らせるとだから乗れと手を引かれた。

「どなたか存じ上げない方の車には乗れませんので」

「ふざけるのも大概にしろっ」

「ふざけてなんかいません、どこかでお会いしましたか?」

彼は虚ろな目で睨むので、ん?とわざとらしく小首を傾げると諦めたようにため息をついた。

「ナイトクラブであった銀髪の男から君を守るために護衛をしていただろ、忘れたのか?」

「なんのことだかさっぱり?あなたが記憶していることはそれだけですか?」

ん?と少しの間をおいて考えると雨に濡れて張り付いた髪がうっとおしくなったのか片手でかきあげて掴んだ。

色っぽいです。

髪を掴んだままうつむいていて表情の見えない彼がボソッとなにかをつぶやいたのでなんですか?と返すとばっと顔を上げた。

「あんたとヤった男だっっっ!」

彼は睨むと私はそれなら覚えがありますと返すとあああっ!と声を上げ今度は両手で髪をぐしゃぐしゃにした。

あら、色っぽかったのに。
シャワーの代わりかな?

私は彼の白いスポーツカーに乗り込むと彼も運転席に乗り込んだ。

「乗らないんじゃなかったのか?」

「おにいさんが引き止めるからビショビショになったんですよ?」

それはすまなかったと素直に謝る彼のライトグレーのスーツはダークグレーに変色しており髪からは雫が滴り落ちている。
バッグからハンドタオルを出し彼の頭に乗せガシガシすると手首を掴まれ彼の顔近づいたかと思うとそのまま唇を塞がれた。
一瞬の出来事で思考がついていかないでいると唇が離れ彼の熱っぽい瞳が私を捉えた。

「恋人はできたのか?」

それはと答えようとすると言うなとまた唇を塞がれた。

「おにいさんが聞いてきたんでしょ?」

「おにいさんではなく零だ」

「そんな名前でしたね。急にキスするなんてどうしたんですか?」

すぐ目の前にある彼の顔は鼻の先が触れそうなほどに近い。
ちょっと近いですと彼の厚い胸板を両手で押すと彼の両手でいとも簡単に拘束されてしまいミッション失敗。

「まだわからないのか?」

「わかってますよ」

なっ!とみるみるうちに赤くなる顔。

「おにいさんも物好きですね、私を好きだなんて、でも恋人をつくるつもりはないのでごめんなさい」

「そう簡単に拒否するな」

と頼りなく眉を下げた。

「私のどこが好きなんですか?」

「人を好きになるというのは理屈ではないだろ」

「そうですけど、いままで付き合ってきたステキな女性と違って、図々しくいろいろ言ったり願ったりしますよ?」

「それは恋人なんだから聞き入れる」

「それにおにいさん以外の人とSEXしますよ?」

それはやだと肩を落とす彼。

「ね?付き合いたくなくなったでしょう?」

「それでもだっ、他の奴に盗られてしまったらと思うと気が狂いそうになる」

彼は前髪をぐしゃりと掴むのでその手を取り見つめた。

「私を恋人にするなんて自殺行為ですよ、そんなリスクを冒すなんて、おにいさんはもっと賢い人だと思っていたんですけどね」

「・・・君のためなら死ねる」

「そんなこと言わないで、本当に馬鹿みたい」

彼は呆れたように笑う。

「頭ではわかってはいるんだ。だが感情が邪魔していうことを聞いてくれない」

「もっと好きになっても知りませんよ」

「それでもあなたがほしい」

恥ずかしげもなくそうぶちまけるので私は意地悪く微笑み彼にくちづけた。
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