赤井

□青と緑
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あの日の夜。
お別れを告げたあともしつこく追ってきそうな2人を係員のボディーガードに頼んで無事に家路に着くことができた。
何故あそこがわかったのか?彼等はいったい何者?考えても答えを導き出せずに受付の仕事をこなしていた。

「すみません、△○さんという方にお会いしたいのですが」

聞き覚えのある声にハッとして声の主に目をやるとなんとセクシーの化身の彼とスウィートフェイスの彼がいるではないか。
驚きを隠せずに彼等を見るとニヤリと笑っていた。

この前といい何故ここがわかった。そして何故わたしの名前を知っている。

すると横にスウィートフェイスの彼が私の視線の真ん中に割り込む。

「△○はいるか」

私は目を上にギョロリとしてげんなりしてみせた。

「おいっ、その顔をもう1度でもしてみろ、張り倒すぞっ」

スウィートフェイスの彼はグッと前のめりになり顔に似合わず眉間にしわをよせかなりお怒りのご様子。

「申し訳ありません、どなたかわからない方にはご対応致しかねます」

自分は誰なのか知られてはいけないのか押し黙ってしまった。

いったい何者なの?身分を隠さなきゃいけないって、危ない仕事でもしてるの?

「では、仕事終わりに外で会おう」

「会いません」

スウィートフェイスの彼は身体を震わして怒りを堪えているみたい。
怖いけど、ちょっと可愛い。

「君の仕事が終わるまで外で待っている。今日は逃がさんぞ」

セクシーの化身の彼がそう宣言して会社の出入り口に向かって行き、スウィートフェイスの彼はギロリと睨むと同様に出入り口に向かって行った。



定時になりぞろぞろと退社する人たちを笑顔で見送り3時間程会社で時間を潰したあと流石にもういないだろうと外に出た。
なんせ彼等とお別れをして10時間以上は経っている。
いつも通りの景色で変わりはない。
念のためにとタクシーを止めてタクシーに乗り込む。
行き先を告げるとタクシーが動き出した。
発車してから少しして運転手がちらちらとバックミラーを確認しはじめどうしたんだろうと疑問に思っていると

「なんですかね、後ろの車がずっと煽ってくるんですが」

えっ?と私は後ろを振り返り確認すると赤いマスタングがすぐ後ろにピッタリとくっついていた。
運転席を目を凝らしてよく見ると翡翠色の瞳がギラリとこちらを見ている。
ビクッとした私は急いで前に向き直り少しスピード上げてもらえますか?とおねがいすると任せてくださいと頼もしく肩を回した。
運転手さんのおかげでどんどん赤のマスタングから距離を離すことができてほっとしていると赤のマスタングの後ろから白のスポーツカーが姿を現し、赤のマスタングを物凄いスピードで追い越し、私の乗っているタクシーと横並びになってしまった。
運転席を見るとスウィートフェイスの彼で青の瞳がギラリと光り逃すかと楽しそうに顔を歪めていた。
ゾッとした私は運転主に横の車をどうにか巻いてくださいと悲鳴にも似た声でおねがいするとシートベルトを!と強く促され慌ててシートベルトをつけると、急カーブし身体が遠心力により思い切り傾いたが、同じように白のスポーツカーも急カーブする。
何度か駆け引きをするもなんなくついてきてしまう白のスポーツカーは物凄い音を立てて、ついにタクシー追い抜きいままで一番華麗な急カーブで目の前に横付けすると、タクシーも白いスポーツカーも止まってしまった。
後ろは?と振り返ると赤のマスタングが塞いでいた。
完全に逃げ道を塞がれどうすることもできない。

彼はF1レーサーなの?優勝トロフィーいっぱい持ってるの?

申し訳ありませんと肩を落とす運転手さん。
いえ、あなたはよくやってくださいました。
大丈夫ですよ。見事でした。ありがとうございます。とお礼を言う。
あきらめてタクシーの中で待っていると白のスポーツカーからスウィートフェイスの彼が降りてきて運転手にお見事でしたと告げると後部座席のドアが開き、スウィートフェイスの彼が私の方を覗き込んだ。

「観念しろ、△○」

彼は勝ち誇ったように清々しく笑っていた。
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