エメラルドよ願わくば永久に・・〜緑玉の涙、黄金の魂

□穢れなき微かな光
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「てめえの買い手はローマのお偉いさんだそうだぜ。」「王侯貴族ってのは古今東西キラキラ物と流血が大好きってのが相場だからなあ」
またしても下卑た哄笑。
それから程なくして。
また彼らが訪れたが今日は凶器らしき物を持っていない?
「よお、喜べ、てめえのこれからのご主人様はなんと貴人も貴人、皇帝の第一正妃、通称アウグスタことポッパエアさまだ。」
「本当かよ・・・それならいくらでもふっつかけられるぜ」「おい何かの間違いってことはねえだろうな?」「いやあ あのお方のエメラルド狂いと拷問好きはかの悪名高きご亭主以上だからなあ。」「さっそく売りつけに行こうぜ!」「まあ待てよOOさまはもっと高値でお買いになるとおっしゃっていますので・・・ってライバルの名前出して対抗心を煽り立てるんだ、そうすりゃどんどん値を釣り上げられる。」
男の一人が僕の前髪を掴んで顔を上げさせ言葉を浴びせる。
「あのお方は若くてちょっといい男と見りゃあすぐに寝台に引っぱりこむからなあ。きっと可愛がってもらえるぜ?ま、ご機嫌損ねた日には首が飛ぶだろうけどよ。」
もはや耳についた哄笑。これは何度聞いても慣れない。
「ま、そういうわけでこれからは殴るのは勘弁してやる せいぜいご奉仕するために外見だけでも瑕のねえ身体になっとくんだな。」
体を押さえつけられしみる薬と非常にまずい薬湯を飲まされた。拒もうとしたが虚しい抵抗だった。
ひととおり治療が終わり彼らが去っていくと僕は今まで以上に暗澹とした気持ちで考えた。
(これ以上の地獄が待っているというのならいっそそんな屈辱を味わう前に死んでやつらににせめてもの報復をしてやろうか・・・?)
身体の自由を奪われていても自らの命を断つ方法はいくつも思いつく。
が、どうしても実行する決断がつかない。死が恐ろしいというだけではないだろう。僕は   『ーーわたしは・・・』まだこの状況でも人間を、ひいてはこの世界を信じたいという気持ちが心のどこかにあるのだろう。
数日後、それに応えるような出来事が起きた。
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