One day

□Nessun Dorma
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あんなside


遅れて参加したことを少し咎められた感じだったけれど、ユファンはすぐに生徒達と打ち解け楽しそうにしていて。私はオニュを捜したのだけれど、どうも生徒達に囲まれているようでうまく近づけなくて……結局興奮してブランドの話を喋りまくるキー君の相手、シウォンさんとミノ君の身体の鍛え比べの判定なんてことをしていたら、時間が過ぎて打ち上げはお開きになった。

「ヌナ、家まで送るよ」
ユファンに執拗に言われたけれど、さすがにとそれは断って連絡先を交換してなんとか解放してもらう。生徒の皆はバスで一旦学校に送ってもらうというので、1人駅に向かっていると思いがけず、改札の前にオニュがいた。

「オニュ!」

私に気づくと必死で人混みを追っていたオニュの顔に安堵が広がり。
雑踏の中、その笑顔だけが綺麗に浮かんで。
私はオニュに走り寄り、人目もはばからず手を握ってしまう。

「ヌナ、やっと……話せた」
切れ長の瞳がすうっと見開かれる。
泣き出しそうなオニュのこの顔。
心を鷲掴みにされる、という表現がぴったりで……
「ごめんね、生徒さんが多かったから……」
私だって、オニュが誰といるのか気になってしょうがなかったんだよ。
そう思いながら、ぎゅうと抱きつこうとして、あ、と思い出す。

「そうだ、オニュ、凄いチャンスがきたよ!」

私の言葉にオニュはまたゆっくりと目を見開いた。



オニュside



「ねぇ、オニュ君〜すっごい食べるんだねーそれそんなに美味しい?一口もらっていい?」
「あ、ずるいジョンア、ねぇオニュ君私新作のデザート持ってきたよー」
ひたすら料理の咀嚼を続けていた僕にやたらと女子生徒達が話しかけてきて、少しうっとおしいなぁと思っていたらユファンさんとわぁわぁやってたジョンヒョンが僕の方に来て、
「お前ほんと……ま、いいけど、そろそろお開きになるぞ」
呆れた顔でそう告げて。
「あそ……」
また妬いてる僕にだろうなとおもしろくなくて、素っ気なく手にしていた皿を戻そうとすると
「生徒達にはまたバスが出るけどあんヌナ電車で帰るって言い切ってるぞ。最寄りの駅のmap携帯に送ってやるから、先に行け」
小声で耳打ちして、足早にミノ達のところに戻っていくジョンヒョン。
「あ、あんヌナってなんだよ……」
そんなあだ名……と思いながらも、ジョンヒョンの気遣いはありがたくて。

こっそり会場を抜け出して駅の改札でヌナを待つ。
都市部の駅だし沢山改札のあるところだし、念のためにメールしておいたほうがいいかなと思ったけれど、万が一
「やっぱりユファンに送ってもらうねごめんね」なんて返信が来たらと思うと怖くて……
人混みの中立ち尽くすしかない僕は。
すれ違う人の顔を確認しながら、こんなに沢山の人がいるのに、僕にはヌナしかいないんだって……
ヌナが好きなんだって、改めて心に沁みて……

早く、会いたい……

「オニュ!」

聞きたかった声が響いた時の嬉しさと安心感。
手に触れる温もり。
優しい眼差しで僕を見上げてくれるヌナ。
こんなに嬉しそうに僕に駆け寄ってくれる人。
僕のことを好きでいてくれてる、だから。

ヌナが大切で、愛しくて。
ヌナに見合う男になりたくて。
だから、ヌナから告げられたチャンスに僕は心を決めた。

「留学支援の選考会がもうすぐあるんだって。オニュ参加の推薦をしてもらえることになったよ、受けるよね?」

僕とヌナならきっと大丈夫。

「うん」
よかった、とヌナが抱きついてきて。
僕はしっかりとヌナを抱き締め返しながら、絶対に合格すると誓った。

それが。

僕達に亀裂を生むことになるなんて……

思いもしないで……
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