One day

□魔王 4
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ルハンside


「………オンニ、どうしちゃったのかなぁ、またいつものがさつ癖出てシウミンさんに迷惑かけてないかな………」
取り残された俺達はかなり呆然としたままレストランを出た。
まぁ俺としては………ミッション成功?になるからいいんだろうが、問題なのはなつきが当然だけどしょげまくってることで………
せっかくサプライズしたのに、一気飲みして男といかれちゃったら、そら、なぁ………
おまけに、これから俺は………
んー、でもなぁ、どう見ても………
こいつタオの女版じゃんよ………
「なつき、えっと、さ、俺らの部屋で待ってよ?そしたら二人一緒に戻ってくるだろうから」
「え、いいの?」
「おー、マリカーやろーぜ!」
途端にぱぁっと目を輝かせるなつきを見て、絶対に無傷で帰してやらなきゃな、と思った。

俺達の部屋に入った時に微かな違和感が背筋に走った。

いる。

近くに。

足音ではない。でも息づかいが聞こえる。

「ねールハン?コントローラーどこぉ?」
部屋に入ったなつきがテレビボードの周囲を漁っている。

どうする。このまま部屋で息を潜め様子を探るか。でもシウミンとヌナが………

「ルハン?」

このなつきも下手したら巻き込んでしまう………

俺はポケットを探りながら、なつきの肩に手を置いた。

「なつき、ちょっと待っててな」

睡眠剤で眠らせたなつきをベッドに横たわらせ、臭い消しの香水をもう一度深くつけてドアを開けた。
とりあえず二人を捜そう。
シウミンが追加でとった部屋にいる可能性が高い。何かしら意図が決めているだろう。
全身で周囲を警戒しながらその部屋に近づいていくと。

「は?!」

かなり濃いシウミンの匂いが流れてきた。
俺の心拍数は一気に跳ね上がる。
冷や汗もどわっと溢れた。

「まるばれじゃねぇか!」

俺達にはそれぞれの獣に沿った体臭がある。動物の発情期に出るフェロモンだ。俺達にも興奮したり昂ると出る、そして人を惹く。俺は比較的流出にムラがないし自分でコントローラーしやすかったけれど、シウミンは滅多に出なかった。
ただそれでも普通の人間よりは香ってしまう。記憶の特定を恐れて、俺達は自分のフェロモンを消す効果のある香料を製造し持ち歩いている。
なのに、このエリアにはシウミンの麝香に蓮の香りが混じった匂いが溢れかえっている。
俺は震える手を片手で押さえながら、香りが流れ出しているドアを開けた。

むあっとかなり濃い匂いが鼻をつく。
自分の匂いに耐性がある俺ですら、刺激され口に唾液が溜まった。
恐る恐る部屋に入る。
これだけ匂いが出ているということは。
シウミンの血液が流れているということ。

あの補食者に………まさか………

「………な………」

でも俺の視界に入ってきたのは流血して倒れているシウミンではなかった。

ベッドの周囲に柵が張り巡らされている。その中に………重なる二つの裸体。
衝撃でぼやける視界がゆっくりとクリアになっていく。

巨大な檻の中の二人は………

「シウミン………ヌ………ナ………」

俺の掠れた声が絞り出された時、
シウミンの体の下にいるヌナの腰が跳ね、そのまま痙攣し………ぐたりと全身の力が抜けた………
俺の耳には

「ぁっ、は、ぁ、ぁ、ぁ………ッ」

ヌナの挙げた声が………こびりついて………
身体の芯が熱を………持った………

な、ん、だ………こ………れ………

ゆっくり俺が崩れ落ちるのと、ヌナの上からシウミンが離れるのが同時だった。
シウミンはバスローブを羽織ると、俺の方に歩いてくる。
その間も絶え間なく麝香とシウミンの匂いがして。
俺の身体はどんどん………熱くなる………

「ルハン」
ぞっとする程低いシウミンの声。
腹部を押さえ、かがみ込む俺の肩に手が置かれた。
「し………お前………な、に、や………って………」
ヌナに、な、に………
じり、とシウミンの足が俺の膝の上に乗せられ。
「あっ、うっ………!」
立ち上がりかけていた箇所を踏みつけられた。
「………お前もか………」
その身を引き裂かれるような痛みに床に転げる俺を。
シウミンは酷く醒めた目で見下ろした。

「な、な………嘘だ………ろ………」

俺達は性行為ができない。物理的に勃たないんだ。どんな刺激的な物を見ても与えても。だからいつも俺のフェロモンで朦朧とさせ、指や物で相手を刺激し、行為を行ったことにしていた。

何人………何十人相手にしても………

こんなことになったこと………ないのに………

「シ、ウ………これ、な………なんだ………」

思わずシウミンに腕を伸ばす。
俺は混乱しきっていた。

シウミンは小さくため息をつくと、俺を起こし、ベッドに連れて行った。

そこには両手を鎖に繋がれ、柵にくくりつけられたあんなヌナが裸で横たわっていて………
その身体中からシウミンの匂いがより濃く漂う。肌に大量の白濁した液やてらてらと光る液がかかっていて………
ヌナは浅い息を吐きながら涙を流していた………

「う………あ………」

その息にさえまた俺自身が熱くなる。

「な………んで、こんな………」
俺が呟くと、ヌナがうっすらと目を開け、俺と視線が合った。

「ル………は」

今まで聞いたことのないヌナの俺を呼ぶ声はがつりと俺の背筋に走り。
俺は反射的にヌナに覆い被さり、そのシウミンの体液にまみれた顔にむしゃぶりついてしまう。

「ル………や、め………」

ガチャガチャとヌナが鎖を揺らして抵抗するけれど、その声を塞いでヌナの唇に噛みつくともう止まらなかった。
腰が熱い、脳も鬱憤が溜まる。
出したい、何かを出したい。

ヌナの肌が滑らかで息が詰まる。
俺は性器を取りだし、下着を蹴り落とすように脱ぐとヌナの腰を掴み身を沈めた。

「ぐ………ゎっ………!」

その熱さと肉の爛れた粘りに脳が舐めまわされるような衝撃。
もっともっと。
この粘りを感じたい。
俺は本能のままがむしゃらに腰を振り、ヌナの耳元でうぁうぁと喚き続けた。
俺の喉から出る唸りとヌナの身体から出る水音が耳に木霊する。
やがて腰の熱が全身にまわり、ぐっとヌナの腰が揺れた瞬間、昂りが頭の先から駆けあがっていって。
「う、あああああああ!」
大量の何かが俺の中から排出された………

「………は、はぁ………は………っ………」

俺はそのままヌナの上に力なく崩れ落ちる。
俺の口から垂れた涎がヌナの頬を汚していて………

ヌナの涙に混じり光っていた………

「ぬ………な………」

身体の熱が冷えていく。

俺は………なにを………

身体を離し、近くにあったティッシュでそっとヌナの頬を拭った。
ヌナはぼんやりと目を開き、俺を見つめて………
あの………俺達を日々見守っていてくれた………優しい瞳で………

「ルハン………泣かないで………ご、め………んね………」

そう………言った。

「ヌナ!」

その時俺は頬に伝うものが俺の涙だと気付いて。
ヌナを掻き抱いて震えた。

「ヌナ、ごめん、ごめん………ヌナ………!」

合意じゃなくこんなことをまして俺達を救ってくれたヌナに………
でも俺の懺悔は真の懺悔は………

「ルハン、退け」

ピ、と電子音がして、振り向くとシウミンがスマホを下ろしたところだった。

「シウミン、お前なにを!」
「結果報告の際、さすがに実践中を見せるわけにいかないから」

そう言いながら、ぎしり、とベッドにシウミンが乗りあげてくる。
ヌナの顎を掴むと、噛みつくようなキスをした。

「………ルハンもヌナにだけ………なら、ルハンは………たまになら………いい………か」

そう言いながら、バスローブを脱ぎ捨てて、ヌナに覆い被さった。
そのままずぶり、と腰を進め、ヌナが眉を寄せて顔を振ると、その髪を掴みまた強引に口づけた。
つぅっと唾液がヌナとシウミンを繋ぐ。

「ヌナの子供の父親は僕だから………それは譲ってやらない………」

そう言って獰猛にまた腰を動かし出し。

「………ぁ………ぁ………ぁぁッ!」

ヌナのたてる声に俺は心を掻き乱される。

「ル、は………」

快楽で歪むヌナの唇に俺は自分の唇を重ね。

自分でまた昂りだした己に………手を添えた。

ヌナの感触に。
声に………

深く甘い沼に………引きずり込まれ………た………

止められないんだ………その声に煽られる自分を………

ごめん………ヌ………ナ………
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