One day

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オニュside


「オニュ君、できたよ、これ持っていってくれる?……オニュくーん?」

あんなヌナがキッチンから振り向きながらお皿を渡してくれ、ヌナに見惚れていた僕は慌てて受け取った。

……あれから、夕食も食べずお互いに夢中だった僕達は夜中の空腹で目が覚めて。シャワーを浴びたヌナが、髪を無造作にまとめて、ショートパンツと長袖のTシャツ姿で夜食を作ってくれている。
その部屋着っていうラフな姿のヌナは、なんだかむちむちした感じで……
可愛い。
僕はハムチーズのホットサンドを食べながらも、ヌナから目が離せなかった。
「オニュ君、な、なに?美味しくなかった?」
あまりにも見つめすぎたのか、マグカップを片手に持ったヌナが心配そうに聞いてくるぐらいに。
シャワーあがりのつるつるした鼻先、すっぴんだと涼しげな感じが消えたつぶらな瞳がひどく幼くて。
小さな女の子みたいだ。
「あ、ああ、ごめんなさい、いや、ヌナ……可愛いなぁと思って」
僕の言葉に口を押さえて顔を真っ赤にしたヌナ。
……さっきまで、裸で抱き合ってたのに。
僕のこんな言葉にそんな反応をしてくれるなんて。
ますます可愛くて。
思わずキスをしてしまう。
コーヒー味のキス。
唇を離した後、ヌナが眉を下げて。
「お、オニュ君……そんな恥ずかしいこというの反則……」
そう呟きながら、僕のTシャツの袖(ヌナの大きめのやつを借りた)を掴んでくる!から!
(可愛いいいいよぉぉぉ)
僕はヌナの身体を抱き寄せながら、ヌナのおでこに頬を当てた。

「なんで?ヌナすっごく可愛いです」

そう言うと、ヌナは耳まで赤くなって僕の胸に顔をうずめてしまう。
そのまま抱き締める。

恋って、好きな人とこうして抱き合うってなんて気持ちよくて心が温かくなるんだ。

僕は真っ赤になったままの耳にもそうっと唇を運んだ。

それから、ヌナと出会うまでどう生きてたんだろうって思うぐらい僕の生活はヌナ一色になった。
毎日、放課後はアクアリウムの打ち合わせと称してヌナと待ち合わせして。
その後は一緒に夕食の買い出しにいって、ヌナの家で晩御飯を御馳走になる。で……

「オ……ニュ……ぁ、ふ……ぁっ……」

僕を呼ぶ甘くて切ないヌナの声。

その声を耳にすると、すぐに限界がきちゃうから、聞きたいけど聞きたくない。
僕の身体の下で小さな叫び声をあげるヌナの口を手で塞ぐ。
閉じていた瞳が開かれ、僕が映る。
普段は明るめの鳶色なのに、こうして見下ろしていると青みがかった深い灰色に見えるヌナの瞳。
そこに映る僕は気持ちよさとそれに捕まりすぎないようにとの緊迫感でぐちゃぐちゃだ。

柔らかい。
熱い。
気持ちいい。
出したい。
でも、もっと感じてたい。

「……ゃ……ぁ……ッ」

ヌナの目の端からぽろりと涙がこぼれるのを見てしまった僕は、

「はっ……ぁ、もっ……!」

がっとヌナの腰を強く掴んで果ててしまう。
そのままヌナに覆い被さると、ヌナが僕をきつく抱き締めながら、幾度か震えた。

「ヌナ……好きだよ」

ヌナに囁くと。

「私も、オニュ……」

そうキスを返してくれるヌナはいつも笑顔で。
僕は本当に幸せだった。


あんなside


「あっ、そうだ、あんなヌナ、明日は高校に来てくれるんだよね」
身支度を終えたオニュが、帰りたくないなぁとぶつぶつ言いながら靴を履きつつ、私を見上げる。

(ぐふぅ、拗ね顔からのそんな笑顔っ超可愛いっ……)

思わず抱きつきたくなるけれど、それをするとまた帰せなくなって、で、何度かその繰り返しでこのところ外泊が増えてしまっているので、耐える……
オニュは最初の日から、生徒会の打ち合わせの延長で友達の家に泊まっていることにしているそうなので、親御さんはそんなに気にしてないらしいけど、友達の機嫌が悪くなってきた、そうで……
(まぁ、あんまにもだとそうだよね、口裏合わせるのとかも面倒だろうし……)

「うん、ボランティアの時間ってちゃんと授業にあるんだね。教授とゼミのメンバーでお邪魔するね」
「お昼一緒に食べれるかな、あ、友達紹介するからね」
「生徒会と書記のミノキーコンビだっけ?」
「ミンキーって言われてるんだ、すっごい面白くていい奴らだから、楽しみにしててね」
にこにこと立ち上がったオニュが、ふわりと抱きついてきて。

「……早く明日にならないかな」

(……おっふう……かわゆすぎ……!)
本当はこの温もりも心地よく響く声も離したくない。
でも、生活を乱れさせてしまっては……

オニュの頬に手を当てて、優しく浅いキスをする。

「家に着いたら、メールして。で、すぐ布団に入って目を瞑って」

おでこをすりすりとくっつけると、えへっとまた可愛く微笑むオニュ。

「うん、じゃあね、おやすみ、あんなヌナ」

オニュが名残惜しそうにドアから出ていくと、遠ざかる足音を確認しながらロックをかけた。

ソファーベッドに戻り、横たわる。

(……オニュの匂いがする)

少し前まで裸で抱き合っててまだオニュの感触まで残っていて、埋もれそうなほどのキスもされたのに……
もうオニュに会いたい。

『あんなヌナ、これしよう?』
『ヌナ、チキンもっと食べたいよ』

オニュは一見控えめだけれど、あるラインを越えると凄く甘えたになるみたいで。初めてこの部屋に泊まった夜から、ほぼ毎日なんだかんだと理由をつけては来て、スキンシップをねだってくる。若いからやりたい盛りなのかなぁとも思ったりするけれど、ゲームを一緒にしたりご飯を食べさせあったり、二人で寛ぐ時間も欲しがるので、自然と部屋には物が増えてきた。
お揃いのマグカップ、食器棚に本棚、ゲーム機、ラグとクッション。
オニュの歌声が録音されたスピーカー。 

「……こうして」

日々は過ぎていくんだな……
部屋に増した生活感と薄れていく哀しい執着。

オニュは私にとって救いの天使……


だった……
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