One day

□お姉さんはマジで綺麗
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ある晴れた日の土曜日
海沿いにある水族館の最寄り駅でなにやらこそこそと怪しい動きをする二人組が……

「ちょ、まだなのかよ、オニュ達」
モデルばりの小顔に長い手足の青年が、キャップを深くかぶり直しながら、隣にいるピンクの髪に中々前衛的なファッションをした青年に声をかける。
「僕が時間指定したんだから間違いないの!それより、ミノ無駄にでかいんだから、身動き気を付けてよ!」
「む、無駄にって、お前の服の方が目立つだろーがぁっ蛍光色の靴ってあり得ねぇだろーキー!」
駅の端にある大きめの柱の陰でやり合う二人。いかんせん、イケメンの二人がわぁわぁやってるので無駄に注目を集めているが全く気づいていなかった。
二人の頭のなかは

『 友人オニュの初デートを生温かく見守る あわよくばでばがめしちゃう 』

とゆうミッションで一杯なのだ。

生徒会会長であるミノと書記のキー。副会長のオニュは二人の友人で、のんびりしたいい奴なのだか浮いた話が全くない好好爺みたいな男で。高校三年生にもなれば、恋話で盛り上がりたいものなのだが、オニュは
『そーゆーのよくわかんないやぁ』
とふわぁと笑うだけで。
その点に関してだけは、はっきりいってつまんなかった二人はオニュが生徒会活動の一環で知り合った大学生のヌナに

『僕……こ、こ、恋しちゃった……みたい……』
『も、森下さんのこと……しか浮かばないんだ……』
なんて真っ赤な顔、潤んだ瞳で言われたて。

「「キターーーーーーーーー(゚∀゚ 三 ゚∀゚)」」

と万歳三唱してしまったのだ。
そして瞬時に『オニュの恋路応援団』
を設立、二人の見事な連携プレーにより(ミノがオニュのスマホを奪ってキーが相手にメールする)見事本日のデートをこぎつけたのだ。
とゆうことで、二人が降り立つであろう駅に先回りして潜んでいるのである←
「それにしても、どんなヌナなんだろ、あのオニュが好きになるなんて」
「なぁ、あの別名霞の君のオニュがなぁ。誰が言い寄ってもふわーっとかわすから、霧とか言われてやんの」
「ほんっと、枯れてるってゆうか、じじくっっっさくって、もーこのまま仙人になるのかと思ってたから安心したけどねー。初恋が中学校の先生って言ってたから大人っぽいヌナなのかなぁ」
「えっなんだそれ俺初耳だぞ!」
「ミノに言うとからかわれるから言わなかったんでしょ」
「なんだよ、それ……くそー……大人っぽいのかぁ……ぐふふ、胸のでっかい色気満々のヌナなんだろうなぁ〜」
「……けっ」
キーと呼ばれる青年が、ミノと呼ぶ青年に蹴りを入れた瞬間
「いでっ、このや、あっ、オニュ来た!」
脛を撫でながらミノが叫ぶと、キーが柱からにょっと顔を出す。
肌の白いほわほわした感じの青年が、足取りもほわほわした感じで改札を抜けようとしている。
その青年の少し前に黒髪のロングヘアーでロングニットを着た女性が歩いていて。
「……うわ、あの人?」
「………………」
「確かに大人の女性って感じ……凜としてるってゆうか、あー……アジアンビューティー……?」
「……………………」
「ちょっ、ミノ、あと追うよ!なに突っ立ってんの!」
キーは口を開けたまま硬直しているミノに再度蹴りを入れると、水族館に向かって行く二人の背後を睨んだ。
「あ、ああ……」
キーに蹴られてはっと正気に戻ったミノも慌ててキーについていく。
オニュ達は水族館の入り口につくと、なにやらタグを受け取ってそれを
「わっ、ヌナがオニュにかけて……いい感じじゃん!」
「ぐっ…………」
「っと思ったらきゃーーーーー手繋ぎキターーーーーーーーー」
「ぐはぁッ………………」
「うわっ、そのまま中入ってった!ミノ、早くチケット買って!」
「えっ、あ、ああ……っ」
キーに急かされながらチケットを買ったミノはふげ、うげ、はぐ、と妙な呻き声を呟きながらオニュの姿を追うが……

「あれ、おっかしーな、見当たらないねぇ」
「……あー、いない、なぁ……」
「まさかもう出たとかないよねぇ……」

館内のどこにもオニュとヌナらしき人がいないのだ。土曜日で人もそこそこいるので、尾行してもバレないだろうと思っていたのが完全にあだになっていて、余計に見つけにくい。
二人は目立たぬように気を付けながら、こそこそと薄暗い館内を四方八方走り回って。
小一時間後、
「あーもー僕喉渇いたぁ……」
「お、俺も……」
ふらふらと館内を出て、自動販売機を探す二人。
と、
「あ!」
「いたっ!」
必死な形相で、自動販売機のボタンを押しているオニュを発見!
「うわっなにあの顔……初めて見た……」
「な、なんであんな忙いでんだ、あいつ?」
オニュは普段からは考えられない慌ただしい仕草でペットボトルを取り出して早足で駆けていく。
「オニュが走ってる!」
「マジでか、体育の授業でもないのに!」
驚愕しながらオニュを追うと、
「うわっ、手作りサンドイッチ……!さすが女子大生ッ女子力たかっ……」
「ぐがっ……、う、裏山っ……」
ヌナの手作りサンドイッチを頬張るオニュを見守りなから、
「ちょ、僕もお腹すいたよ、ミノなんか買ってきて!」
「えー」
「早く!あ、アイスティーは無糖でね!」
キーに小突かれて渋々近くのホットドッグ屋に買い出しに行くミノ。
「おい、マスタード少なめでよかったよな」
「ピクルス増量だよね?さっきオニュがむせたのにヌナ優しく顔触ったりめっちゃいい雰囲気だよ〜」
「……そ、そうか……ぬぅっ……」
「いただきまーす……んっ、ん?」
「いただきま、お?」
ホットドッグを頬張る二人の視線の先のオニュが立ち上がり、歌い出した。

オニュの独特の歌声が二人のところまで潮風にのって流れてくる。

「……ひぇー、波の音のBGM青空バック、そこにSHE!やるじゃんオニュ!」
「ぬ、ヌナ、すっげ聞き入ってないかっ……」
「そら、オニュだよーミノ」
「……だよな……」

オニュは数多くいる声楽科の学生の中でも飛び抜けて特徴のある歌声の持ち主。なぜか先生方の評価はいまいちなのだが、生徒達には熱狂的なファンがいるぐらいなのだ。勿論、二人もオニュの歌声が大好きだった。

「あれ……ヌナ泣いて……る?」
「うわっ、えっ、オニュ寄ってってる!」

オニュが歌うのを止め、ヌナの傍にかがみこんだ。

「近すぎんだろっ……え、な……あっ、あーーーーーーー」
「うひょおおおおおおおおおおお!ヌナからいった!」

一瞬見つめあった二人はヌナから寄っていく形でキスをして。

「おしっ、このまま告白だねーっオニュ!」
「…………へぐぅッ」
「おっ、コクってる!」
「あーやっちゃったのかよっ……」

唇を離したオニュが、真剣な顔でヌナに何か伝えて。

「えっヌナダメなの?」
「やりっ、えっ、いや、ぎゃあああ」
「まさかのハグうつうつつつつつ」

俯いたと思ったヌナがオニュに抱きついて。

「あ、あれ……なんかまたキスしてるね」
「……………………長くね?」
「あ、鼻すりすりとかしてる…………つかいつまで抱き合ってんの?」
「……これって、もう俺らいる必要ある……?」
しばし二人で見つめあい。

「あ、またやってる」
「……俺、帰る……」

いつまでも絡み合っているオニュとヌナにくるりと背を向けたミノがとぼとぼと駅に向かい、キーもそれに続いて。

無言で電車に乗り、帰路につく。

ミッションは大成功。
なのに。

((まさかオニュに彼女ができるなんて))

((うまくいかなくて悩むオニュをいじるのが楽しみだったのに))

互いに肩をぶつけながら、ぐったりと座席に座っていると。

PPP……

((オニュからだ!))

キーのスマホにきたメッセージを読んだ瞬間、ミノがどんっと真横に倒れて。
キーもスマホを握りしめたまま天を仰いだ。

『今日、もしかしたらキーの家に泊まったことにしてもらうかも……いい?』


「……応援団!」
「解散だよっおおおおお……!!」

ミノとキーの絶叫が。
響き渡った小春日和の車内でした……


〜 続く 〜

かな?


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