過去拍手話

□白銀の月人
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あんなとタオのオリジナルであるファン・ズータオ(シトウ)のお話です
あんな13歳シトウ14歳




〜 白銀の月人 〜



濃い緑の森
咲き乱れる原色の花
微かに響く動物の鳴き声
エメラルドグリーンの大きな葉をかき分けた先に


彼は在た




雪のように白い肌に黒い髪
切れ長できつく整った瞳
刃物のような鋭い鼻梁と顎のライン
神々しいまでの美しさ


彼は黒曜石のような黒々とした瞳に私を映すと


薄紅色の唇を少し緩めた


「你好」


少し高めの柔らかな声。

「あ、えっと、にーはお?」

見惚れていた私は慌ててポケットから携帯を出して辞書機能を呼び出す。
通っている剣道道場の師範が主催するボランティア活動の一環で亜熱帯のD国に初めて来た。
地域の子供達の為の施設運営の為にパーティーを開いて各国の大使館の方々を招待し、寄付金を募るというもので。
『頼む、あんながいるとTVXQ帝国と繋がりがあるってだけで信用されるし喜ばれるんだ、パーティーに出るだけでいいから来てくれないか』
師範の息子のニックンに頼み込まれて来たけど、ボランティアっていうよりただの休暇を楽しむセレブの集まりに苛立って。
早々にパーティー会場を抜け出して。
ホテルの庭を散策していると、黒い大きな………虎のようなシルエットが横切っていった。
「え、なにあれ」
思わずそのシルエットを追い、近くの森に入った時、この綺麗な青年と出会った。

(背が高くて均等のとれた体つき、何か武術をしてるのかな………)

白銀のチャイナ服、挨拶から

「えと、えと、C国の言葉は、」
「ああ………きみのなまえは?」
「え?」

必死で携帯の画面を漁っていると、すぐ近くに彼が来ていて。

(ひっ………なん、肌発光してるみたいに綺麗………睫毛ながっっっ)

さらりとまとめた髪をゆらしながら、私を覗き込んだ。

「はなせます………ぼく、シトウ………」
「あ、森下あんな、です」

にこりとシトウは微笑むと、綺麗な白い手を私の肩に乗せた。

「まよいこんだ………白银的猫」

「え?」

まよいこんだ?そこでしっかり回りを見渡してみると、奥に白い中華風の建物が見えるし、門や柵も………どうやら森だと思っていたのは………

「え、ここ庭?あ、ご、ごめんなさい、私、そこのホテルにステイしてて、森が繋がっているなんて、わからなくて」
「だいじょうぶ、ここはまださいしょだから、よくあることです」
シトウは目を細めて私を見つめると。
「あんな、おちゃにまねきます、おいで」
そう言って、手を握って歩き出した。
「え………」

戸惑ったけれど、不法侵入してしまっているし、それを歓迎してくれてるのに断るのもできなくて。
月明かりの下、豪奢な建物に向かって緑の匂いがぷんぷん漂う中、シトウと歩く。
途中でチャイナ服を着た屋敷の従業員らしき人達とすれ違い、シトウは私にわからない言葉でなにか指示をして。

建物の前にあったテラスに中国茶とお菓子が用意されていた。

そこに案内され、座るとメイドさんがお茶を入れてくれた。

小さな器が可愛くて、手にとって眺めていると

「なにかへん?」

シトウが尋ねてくる。

「あ、いえ、小さくて可愛いなと思って。お茶をおいしいです、ありがとう」

「あんな………はこのおちゃ、じゃ、ないの?」
「えっとねぇ、画像あったかな………」

携帯の画像データーを呼び出して、友達とスタバでお茶してるのや家でなつきとお茶を飲んでいるものを見せる。

「こんな感じかな、外ではペットボトルで飲んだりするもするし。こんな可愛い器で、本格的に飲まないです」
シトウはまじまじと画面を見つめ、これは?これはなに?どんなもの?と色々聞いてきて、それに答えていくうちにどんどん私の隣に身を寄せてきて………

(ひぃ、ほんでもこの美貌慣れません!近い近いがな!)

頬にシトウの息がかかるぐらいに近寄られて。
退きすぎて、もうベンチから落ちそうになっていく。
(す、座るとこないっ)
ふと、妙な体制をしている私に気づいたシトウが肩を掴んできた。
(ちょ、ま、て、やめて)
イケメンすぎるって暴力に近いです、はい。
さっきから息できてません。

「あんな………なんさい?」
「えっと、13さい」
「おお、わたし14さい、おにいさんね」

シトウがそう言って私を抱き寄せようとした時、携帯が鳴った。

(助かった!)

身をかわして、立ち上がり電話に出る。

「もしもし」
『おい、あんな、どこにいるんだ、もう終わったぞ、部屋戻ってるのか?』
「あ、ニックンオッパ、今ちょっと外ってゆうか、えと………買い出し?来てて、すぐ帰ります」
ニックンからの電話を切って、シトウに頭を下げる。
「もう、帰ります。お茶ご馳走さまでした」
ベンチに座っていたシトウがしゅるりと隣に来た。
(なにこの身のこなし………)
「かえる、の?」
「はい、えっと、スクールで来てるから、せんせいに言われたら帰らないと」
途端にシトウの眉が下がって。
(ひいいいい拗ね顔可愛い………なにこの人)
ぎゅうと手を握られた。
「またきて。ぜったい」
「あ、はい」
「あすもきて。まってるから」
「あ、それは………」
「なぜだめ?」
「ボランティアパーティーに出ないといけなくて。それが続きます」
「………」
切れ長の瞳が少し垂れて潤むのは庇護欲をそそられるけれど、だからって毎日パーティー抜け出すのも、だし、と困っていたら、
「シトウ様、私が森下様の先生にお話してきます」
「スホ」
スーツ姿の青年が立っていて、私に微笑みかけた。
「今天已经回去吧」
そう言って、私に手を伸ばす。
「え、えと」
「不要触摸。是我的东西。不回去已经!」
シトウがその手を払って怒鳴って。
その勢いに怖くなって、慌てて庭に降りて、もう一度お辞儀した。
「明日は駄目かもしれないけど、近いうちにまた遊びにくるから、約束します。おやすみなさい!」
そのまま駆け出して。
「あんな!」
シトウの声を背中に走って走って。
やっとホテルの灯りを見つけた時、ほぅと座り込んでしまった。
「あ、あんな、いたいた、お前なぁー」
ホテルの外でキョロキョロしていたニックンが駆け寄ってくる。
「抜け出すのはいいけど、最終時間にはいてくれよ、こっちの責任問題になるんだからな」
「うう、オッパごめんなさい、はー疲れた」
「お前買い出ししてたのに、荷物は?」
「あ。」
「なにやってんだよ、こっち治安そんなよくないんだから、夜に二度と一人で外行くなよ」
「へーい」
ニックンに首根っこ掴まれてずるずる部屋に連れて行かれる途中。
(あれ………また)
さっき見た凄く大きなシルエットが見えた気がしたけど………
(ま、気のせいか………しっかし無茶苦茶イケメンだっなぁ、シトウ………チャイナ!って感じで………皇帝の息子ってあんな感じなのかな)
初訪問の国で非日常の体験をして。
その緊張がとけた私は、欠伸を連発してニックンにどつかれるはめになった。
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