過去拍手話

□2月22日
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2月22日 〜ユチョンside〜 


抱き締めたらぐっとしなる身体。
滑らかな肌触りを掴もうとしてもするりと逃げてしまう。
そのくせ情事の際俺を見上げる目は蕩けていて。

「あっ……、や……んっ……ああああ……ッ……」

俺の身体の下で果てた後俺の肩にもたれて無防備に眠る姿。

「……ほんっと猫だなこいつ……」

呼んでも来たりこなかったり。
ーなんとなく、意地になればなる程涼しい顔で遠ざかっていく気がする。
そのくせ、こっちがぼうっとしていると、不意に隣に来たり。
……こうやって、心許したように傍で過ごしたりする。

外見は人並みで、5人いたら3人目に名前を覚えるタイプ。少し痩せて見える身体は手足は長いけど、抜群ってわけでもなく。
なにもかも、まぁ悪くはないかなって感じ。
通っていた教会の礼拝仲間で、俺の彼女の友達で。俺はいつも幼い弟の面倒をみていて、日曜日の礼拝が終わった後、彼女にデートをねだられても弟を一人にできなくて困っていたら、あんなが弟を預かってくれた。
そこから実家ぐるみで親しくなって。弟のことは毎週預かってくれるし、あんなの家にSM学園のコネがあると知った母親が、あんなの親に強引に頼み込んで俺を声楽の特待生に推薦してもらった時も、あんながかなり口添えしてくれたらしくて。
俺に気があるんだと思ってた。

俺は女の子は色白で極上に可愛くてふわふわしてて守りたいって感じの子が好みだったし、さすがに彼女の友達には手をだすのもなぁ、でもここまで尽くしてくれるんだし告白してきたらせめてキスでもしてやろうかなって、思ってたら。

「あー、あれねー弟君が鬼可愛くてね!もーマジで引き取って育てて逆光源氏最高っほおおおおお、ってやりたいぐらいでー。毎週、めくるめく至福の時間でさぁ。もー一生ユチョン迎えにくんな!って思ってた。で、そんな可愛い子にさぁ『ヌナぁ、ヒョンのことお願いします!』とか言われた日にゃ頑張るしかないっしょー」

↑↑俺のもう一人の彼女があんなとの仲を疑って本人に聞いた時の音声録音。
ところどころ意味不明な単語があるけれど、とりあえず俺のプライドを傷つけるには充分な奴の言い分だった。
SM学園に入学しても、徹底的に幼なじみってスタンツを周囲には貫いていた。

けれど。

俺は、彼女と離れて、適当に遊ぶ相手も作る時間もなくて。

あんなも、入学して早々脚を痛めて特待生枠から外れ退屈だったのか。
放課後いつもいた部活仲間とつるまなくなり寂しかったのか。

手を伸ばしてみたら、抵抗しなかった。

意外だったのが、

『……お前、はじめてじゃないのかよ……』
『は?何でそんなことユチョンに言われなあかんの?』

それと、普段は高くないのに

『はっ、ぁ……ぁ……っー!』

抱かれてる時の声が別人の様に甘くて妖艶で。

……無茶苦茶腰にクる。


気がついたら、暇があればメールするようになった。
でもこいつは出会った頃と同じままでなにもかわらない。
俺以外に親しい男もいないみたいだ。たまにぼうっとどこ見てんのか何考えてんのかわからない様子の時があるけど、あんなの口から男の名前を聞くことはない。
そんな状態で普通、ほぼ毎週やって、学校でも同級生として会話してたら、彼女面になって行事関係気にするよな。
なのに結局あんなからチョコはこなかった。
まぁ他から死ぬほどもらったから別にいいけど……
でも、呼び出しを無視されたのはむかつくんだ。
だから。

首筋をのけ反らせて眠るあんなの鎖骨にそっと唇をつける。
シャツの隙間から見える場所。
わかる奴にはわかる。
こんな平凡な女に凄いギャップだろ。
それに気づく奴なんて、まぁ学校にはいないだろうけどな……

「……あ、ヤバい寝てらんない」
眠ってたあんなが不意に目を開けた。

ここ数日俺のところにあんなが来なかったから、色々物足りなかった俺はもう少し引き留めようとしたけど、俺の手が緩んだ隙にさっと身支度されて。

……あっそ、好きにしろ……

電話をしながら、窓から外を見ていると、出ていったあんなの姿があった。
シルバーグレーの細身のコートがすたすたと校舎に向かっていく様は、

「……ほんと猫みてぇ……」

いつかTVで見たロシアンブルーそのもの。

『えっ?ユチョン君どうしたの……?猫?』

「……ああ、ごめんね、なんでもないよ、あ、チョコレートありがとう、帰ってからもらったの美味しかったよ」

通話相手の高くて可愛らしい声がはしゃぐ。

『ほんと!嬉しい〜頑張って作ったから!ふふふ、会いに来てくれたし、幸せなバレンタインだったね』

「……そうだね……」

『そういえば、猫ってチョコあげちゃ駄目なんだって。死んでしまうらしいよー』

「……へぇ、そうなんだ……」

それであいつチョコ渡してこないのか?
ふぅん。

ま、そういうことでいっか……

俺は会話をしながら、いつあんなが赤い印に気づくかと。

なつかなくて気まぐれで。

でも、時折甘えてくる。

猫の後ろ姿を、見つめながらぺろりと。
唇を、舐めた……。




続き チャンミンsideです
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