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□レッドアイ ユノside 出会い編
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レッドアイ、あんなとの出会い編ユノsideです。
ちゃらユノです、苦手な方は逃げてー!←
イメージはスリスリユノ←大好物




レッドアイ あんなとの出会い編〜ユノside〜


あんヌナの第一印象は最悪だった。
色気のないグレーのスーツ。黒ぶち眼鏡に地味なシュシュでまとめた髪。
生真面目すぎて婚期を逃したお局そのものって感じ。
おまけに、ぎろっと俺を見上げて
「ドンヘ部長、私バイトのお守りは困ります」
ちょマジ?この俺だよ?物心ついた時から誰彼と声をかけられ、芸能界にも何回もスカウトされてる俺と一緒に仕事したくないなんて、男にも言われたことないのに!
あ、俺が格好よすぎて近寄るのがこわいってとこね、それも多々経験済み。
「ヌナ、そんな寂しいこと言わないでくださいよ〜僕はヌナと仕事組めて嬉しいです!」
こういって、にっこり微笑んで手をにぎったら、いちこ……
バシッ 俺の伸ばした手を振り払ったお局は。
一息おいて複雑な顔をした。

『 違う 』

ーん?

とても訝しげな目。
その色は次の瞬間ただの不機嫌なものになっていたけど。
そんな顔されたのも初で。
え?俺の存在を認めない気?
なんだ、こいつ?

「まぁまぁ、森下、ユノは俺の知り合いの親戚でさ、今まで色々あって信頼できる奴じゃないと組ませにくいんだよ」
ドンヘヒョンがお局の肩を叩いて声をかける。「色々あったなら雇わないでください」
厭わしそうに言い捨てると、立ち去ろうとする。
「森下、今日の現場新システムと入れ換えるんだろ、あのプログラミング、こいつが組んだんだ」
その言葉にお局の動きが止まった。
「……で、だから、ユノにしか組み直せない、まだマニュアルできてないんだ」
カツカツと低いヒールを鳴らしながら俺のところに寄ってきたお局は
「3分で支度しな……!」
そう囁き、がんっと俺の靴を、踏んだ!
「うぎぁゃーっ」
突然の痛みに飛び上がる俺。
「ドンヘ部長!とりあえずそいつに仕事する時の格好ちゃんとさせてください!車まわしてきます」
肩をいからせながら外に出ていく。
「あっ、ユノ、現場には安全靴履いて行けや、作業服もいるから、すまん言うの忘れてたわ……」
ドンヘヒョンが慌てて駆け寄ってくれるけどほんまなんやねんあのお局っ……
口でゆえや!

勿論、現場に向かう車内は無言で。
カーオーディオからの流行りの曲が唯一の音。

くそーあんまり人と関わらなくていいバイトがしたくてヒョンに頼んでもらったのに、よりによってこんなお局と仕事だなんて全然楽しくねー。作業服も聞いてねぇぞ……!セキュリティ課は私服ってゆってたよな?これだったらバーテンのバイト辞めなきゃよかった。
……や、そしたら近いうちに誰かに刺されてたか……。
痛いのは論外。

俺はただ毎日を楽しく過ごしたいだけ。
俺と話す人は大抵とても嬉しそうに、楽しそうになる。じゃ、俺も幸せ、んで気持ちよければもっと幸せ、それだけ、なのに。
皆好きだの自分だけを見て、ずっと一緒にいて、だの……すぐに言い出して勝手に揉めて。
面倒くせぇ。
誰とだってたいして気持ちよさも面白さも変わらない。いいなと思った相手は100%来るし。
だったら、楽な方がいい。当然。
まぁ、だから今回限りでもいっか、また別探そ……
今回は運が悪かったってことで……
俺は隣のお局をちらりと見て、溜め息をついた。

「着いたから、準備して」
大きな工場の来客駐車場に車が停まり、俺が先に降りてトランクから荷物をだしていると
「さて」
かつん、と、お局がおりてき……お?
「ヌナ、作業するんですか?」
いつの間に着替えたのか、シャツの上に濃紺の作業服を羽織ったお局がヒールから安全靴に履き替える。
眼鏡外してメイクも若干直してる?
ふーん、アイライン強調させたらそこそこじゃん。
「……当たり前でしょ」
何言ってんのこいつ、って、顔をしながらお局が粉塵用ゴーグルを装着した。
同じものを俺に手渡してくる。
「この製薬会社の現場には硝子粉塵があるし、劇薬の臭気が時折出るから、これとマスクは絶対に外さないように」
技術整備課と言えど、女だしてっきりお飾り営業なのかと思ってた俺は度肝を抜かれうろたえてしまった。
「えっ、なんすかそれ」
「ちっ、ドンヘ部長研修ぐらいやっとけよーほんっとぶっつけ本番タイプなんだから!とりあえず、今日はここの現場のシステムプログラム入れ換え!メインコンピューターシステムがあるところまで工場内通らないといけないの!」
「えっ、そんなの通信で……」
「あほか、そんなことしたらあんた達みたいなのがあっちゅう間にメインコンピューター乗っとるでしょ!」
はよ着いてこい!そう言いながら、俺でも両手で運んだ機材箱を片手で持ち上げ、すたすたと歩いていく。
「……すげー」
俺達は警備室で手続きを済ませると、別室に通され荷物をチェックをされ携帯も取り上げられ没収された(あとで、返してくれるらしい)
工場の人間に案内されながら(でかいからカートで移動!)、てきぱきと仕事の進行予定の打ち合わせをするお局の横で、俺は初めての経験にただただ唖然とするばかりだった。
途中何度か下を向くよう指示され(機密施設周囲らしい、あと、他会社が設置した機械は基本的には見てはいけないんだそうだ)複雑にゲートを抜け、やっと総ガラス張りの巨大なコンピュータールームが見えた。
さっと確認して、そんなにやっかいなコンピューター達でないことに一安心。
「今うちの者がバックアップをとっています」
「わかりました。ユノ、もうゴーグルとマスク外していいから」
俺達が通されたコンピューター室にはスーツ姿の社員と複数の作業服姿の社員がパソコンのモニターに張り付いていた。
「森下さん」
スーツ姿の社員が俺達に気付き声をかけてきた。お局の隣の俺を困ったような顔で見る。
なにを連れてきたのかって顔だ。
まぁ作業服着てても金髪だしな……
「ソンミン課長、うちのユノです。今度のシステムの開発者、今回入れ換えに立ち会わせてもらいます」
頭下げろ、とばかりにお局の手が俺の後頭部を小突き、俺は慌てて頭を下げた。
「えっこんな若い子が……!さすがですね、森下さんとこは……!」
「TVXQ帝国特殊生なので、優秀です、ご安心ください」
その声にコンピューター室全員の視線が俺に集まる。慣れたことなので、俺はにっこり微笑むと、中央にあった空いているデスクにマイパソコンを置いて準備を始めた。わっと周囲に社員が集まってくる。
どうやらお局はパソコン関係はそんなに得意ではないようだ。入り口近くでソンミン課長と進行の再打ち合わせをし、あとは静かに様子を伺っている。
なんだ、じゃああんな荷物わざわざいらないし、作業服でなくてもいいじゃん。
仕事しますよってアピールかよ。
俺は悪態をつきながら、ふんふんとプログラミングの設置準備を進める。この規模だし、俺が遊び半分で作ったシステムだし、楽勝だな。
そう、思っていたら。

ビービービービービー

耳をつんざくようなアラーム音が鳴り響いた。
「課長、圧縮システムがエラーです」
「またか、こないだもエバポ装置が壊れたところなのに」
「監視室から現場のタンクが破裂してると連絡が!」
コンピューター室に悲鳴のような声が飛び込んできた。
「すぐにレーン止めて、破壊状況確認と回収作業にまわって」
ソンミン課長がインカムでバタバタと指示を出し、
「すみません、こちらには影響がないのでだ……」
「課長!ダメです、停止指示が一部のレーンだけはね除けられます!」
「あそこは劇薬エリアか、よりによって一番面倒な……おい、バックアップあとどれだけかかる」
「30分です、その間レーンを止めれないと薬が流れ続けます」
「排水処理貯水タンクが基準値水位を越えたら工事の運営ペナルティです、二週間薬の出荷停止です」
パソコンモニターを確認していた社員の声にお局の顔色がかわる。
「ソンミン課長、現場私も行かせてください、うちが設置した機械があるエリアですよね。ユノ、そこのシステム見せてもらってエラー信号拾っておいて」
「えっ、ヌナ?」
俺を残し、お局はソンミン課長と部屋を出ていってしまう。工場内は警告音が各箇所から鳴り響き、作業員達が足早に走り回っていて、
「パニック映画みてぇ……」
なんか、非現実すぎておもしろっ……!
テンションあがってきた!
「ユノ君、だっけ、これが今出てる信号だけど!」
俺が呑気に呟いていたら、ノートパソコンを押し付けられた。
「……あー、これ……単純に現場の装置破損ですね、それにプログラミングが五重にかぶってて通信がどこにもいかないのか」
「くそっ1つを解いてもすぐに次がかぶる!」
ハッカー対策があだになってんだろうけど、これ解けないの?
「ちょっと、かしてください」
隣で頭をかきむしる社員のパソコンに手を伸ばして、ちょちょちょちょ、ちょっと。
「全部基礎は同じだったので、これで大丈夫っす」
俺がキーボードから手を離すと、アラーム音が幾つか消えた。
「監視室から連絡です、薬品ルームの破損がひどい状態で人手欲しいそうです、手伝える方いってください!」
ぽかんと俺を見上げる社員達に微笑んで、俺は手をあげた。

うわー映画だ映画だ……!
鼻をつんざく異臭にもくもくと立ち上がる灰色の煙、絶対に煙を吸わないようにと簡易ガスマスクを手渡された。
大きな扉の隙間からガスマスクをかぶった何人か作業員が飛び出してきて、その中にお局がいた。
「ヌナ〜」
「ユノ、前後の装置処理ありがとう」
かぶっとマスクを外したお局が俺に声をかけたあと、隣にいたソンミン課長に声をかけた。
「本体のメインスイッチを切らないと薬は止められないようです。消耗破損ではないようなので、シーケンスが稼働していませんね」
「メインスイッチボックスは液体プールの底にあるんだ。薬が混じってガスが発生してしまってる、防護スーツじゃないと作業できない」
「課長、メインスイッチのパネルは業者専用のキーがないと開きません!今から呼び出してもすぐには……!」
「しょうがない……レーンは止まったし、バックアップが終わればシステムを切り替えてここを外せる。薬が流れきるまで放置するしかないか……」
「出荷停止二週間……僕達くびですかね……」
社員達の顔色がどんどん真っ青になって、絶望的な空気の中お局が口を開いた。
「防護スーツ持ってきてください」
「えっ、で、でも、破損した機械は森下さんの会社のではないからなんの責任もないんだよ!」
「うちの機械にも影響が出る可能性があるなら迅速に止める必要があります。ユノ、J社のボックスパネル一覧調べて耐薬品用のリストだして。あと、ウエスと耐薬袋をありったけ、早く!」
幾人かの作業員が飛び上がるようにかけていき、
「ソンミン課長、他社の者がメインスイッチパネルを開ける許可を申請してください」
「あ、ああ……」
お局の勢いに押され、ソンミン課長が内線器越しになにやら上と掛け合う間に防護スーツが届き、お局が装着しはじめる。
うわーなんかほんまごっつくて、暑そっ……
こんなん着て動けんの?
俺はノートパソコン画面にリストを出し、幾つかピックアップしてお局のところに持っていった。
「ヌナ、この三種類が製薬工場で使われてるみたい」
「ありがとう。そこの工具箱とってくれる?」
手渡された工具箱をごそごそとさぐり、金属の棒になにやら溝を入れていくお局。
「こんな単純な装置なの?」
「緊急事態に備えて、幾つかのパターンが決められてるの。それが知られると意味のない専用、だから、内緒なんだけどね」
小声で俺に返事をし、とりあえず中の留め金が外れりゃいーの、と言いきったお局にソンミン課長が駆け寄ってきた。
「森下さん、駄目だ、女性は入れないと上がいってる」
「え……でもパネルスイッチのあわせは誰かできますか?」
「この現場にはいないんだ……今よそから呼んでる。こちらとしても出荷停止はどうしても避けたい、けれど出産に影響がでる薬品が入っているから女性はだめだと上が。法律を破ると同じペナルティだ」
「……私は子供が元々産めません、医療的にも証明書があるので後で本社に届けさせます。それでいいですね!」
ぱしっとお局は言い捨てると、
「ユノ、液体プールの構造図出してパネルスイッチの場所無線で指示して」
じゃっとファスナーをあげて、防護スーツの装着を完了させた。
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