過去拍手話
□バナナホットサンド テミンsid
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バナナホットサンド 〜テミンside〜
僕は結構眠りが深い方で。
一旦寝入っちゃうと、雷が鳴っても起きないらしい。鳴ってる時寝てるから自分じゃわかんないよ。
まぁとにかく熟睡安眠がモットーだった僕が。
「うわっどう聞いてもこれあの声じゃん!アッパさいってー!なに考えてんだよ!」
夜中に女の矯声で起こされるなんて!
いくらフリーたって思春期真っ只中の息子がいんだぞ!女連れ込むか、ふつー!…あ、もしかしたら、アッパのことだから今晩から僕がくるってメール読んでないとか?
「そゆ抜けてるとこがママに逃げられた原因だってのに」
ぶつぶつ言いながら二階の自室を出て声の発信現場を探す。途切れ途切れに、高く甘い泣き声が流れていたそこは。
「うわっリビングとかまっすますあり得ない〜ママに言いつけて僕との面談権取り上げてやろーかな」
ママの再婚相手は海外の大富豪だからそんなのは、簡単で。
「くそ、でもそれしちゃうとなぁ」
元々僕を産む前から有名モデルとして世界中で活躍していたママはどうしても僕を海外で育てたいらしい。今回もしつこく一緒に移住させようとしてた。アッパの面談権を盾に残ったのは僕の意志。何故かというと
「やっぱ自国のバナナウユが最高なんだよね!」
バナナウユの美味しくない国なんて行けないよ!
だからNEW保護者のアッパが風紀的にどうかなってことしてもらったら困るんだよね!
「とりあえず追い出すか」
朝早くご近所さんに見られでもしたら大変だ。
拳を鳴らしながら、階段を下りてリビングの扉に手をかける…までもなく半開きの扉先には動線にそって転々と衣服が転がっていた。
薄暗い空間の中心にでこんもりしたブランケットがゆらゆらしてて。その合間からひぃひぃと細い鳴き声が漏れてくる。
「…えっまさか…」
人影は間違いなく二人分、あの誤魔化してるけど最近結構やばい後頭部は間違いなくアッパ。
そのアッパの下に長い髪が流れていて、小さな顎が浮かんで見える。
下半身はブランケットに覆われてて見えないけど、上半身は斜め後ろの角度から暗さに慣れてきた目で、しっかり見えた、から。
「泣いてんのアッパかよ…」
それも、喘ぎってゆうかがち泣き。ママとの離婚が決まった時も連日泣きじゃくってたから僕にとっては懐かしいメロディーに近いかも。
アッパはひぃひぃ泣きながら、自分の体の下にある女性の首筋に顔を埋めるように抱きついてた。
え、もしかしてこれやってないの?
いくら中坊でも最近のネット情報により致し方とか雰囲気は学習済み。
この二人は服こそほぼ着てないけど、下半身が全く稼働してない、し、なによりなにより。
アッパに抱き締められてる女性が。
凄く落ち着いた優しい表情で。
いとおしそうに…すがりついてるアッパの額を撫でてる。
口元も動いてるけど…喘ぎとかじゃなくて…
大丈夫、だから
大丈夫、だよ、ここにいるから、ずっと…
ー読んだ単語が結んだ意味が。
浮かんだ時、僕はリビングに背を向けて自室を目指していた。
薄明かりに浮かぶ白い腕。
泣き声に混じる優しい声。
なんか…なんだよ、あれ…
正直初めて見たAVより実践より。
衝撃をうけた。
なんなんだ、これ…
部屋に戻って反芻すればするほど、先刻の情景は濃く蘇って。
「うう〜っ…」
僕の僕はピクリとも反応してないとこからしたら、性的に興奮してるわけではない……
でも僕の中には確実に。
彼女への感情が沸き上がっている。
ただそれが何なのかわからない。
それに僕はとても苛ついて。
「しょーがないなぁ…」
しっかり確認できたわけじゃないけど、年齢もアッパと似た感じだったし。
「ま、外見は合格点ギリギリってとこだけど」
しばらくこの家に来れるようにしてやるか。
「朝起きたら声かけてあーげよっ」
さ、じゃあさっさと寝てお肌に影響ないようにしよ。
「起き抜け一発目に見るのが僕のエンジェルスマイルなんて」
超ラッキーなヌナだよね。
「謎が解けるまでは」
離さないから、ね…
…バナナウユ、飲む?
〜fin〜