alf laylah

□フルハウス 12
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チャニョルside


「ちょちょちょ、姫姫どこ連れてかれるの俺」
俺はキッチンから出てきたゆうなにいきなり腕を掴まれ、ダイニングを抜けて廊下に連れていかれた。
ハンディカメラがぶれるので一旦止めてゆうなを見る。
ふぅ〜、しっかし、ツインテールにメイドエプロン最高〜❗
ゆうなは整った顔立ちだから、ちょっとS寄りのメイド役とかぴったりだ、
「やっと来たわね、あんたの分際で二日も来ないなんて生意気なのよ」
とかいいなぁ………
「ニョル、なんか顔変だよ?」
「ん?そ、そうか?」
そうやって蔑むような表情もいいかも………ん?
「まぁいっか、ニョル、あーんして?」
「ほぇ?あ、あーん?」
唐突にゆうなに言われ、俺は戸惑いながらも口を開けると。
「んっ、屈んで!」
「ほ?んぐっ」
ゆうなにしがみつかれるように腰を曲げると、ぽん、と何かが口に入ってきた。
「んっ、ごふっ、ぐ」
「あ、全部入っちゃった、ニョルごめん」
思わず喉が詰まって噎せた俺の背中をゆうなが叩く。
口のなかには甘いクリームの味とブルーベリー?の酸味があって、甘いパン?が喉に張り付いてる。
俺は咥内を必死で動かしてなんとかそれらを飲み込んだ。
「ぐっ、ん、ん………ふはっ」
ふへー、あ、涙滲んでるわ、俺。
ふぅ、と息を吐くと
「チャニョル………?」
ゆうなが心配そうに俺を見ていて。
「あ、これさっき作ってたお菓子か?ちょっと喉につっかえたけど旨いな〜」
そう言うと、
「………ニョル、大好き………」
そう言ってゆうなが抱きついてきた。
ふにゃん、と胸があたる。
「おほ、ゆ………」
途端にぼんっと今朝の光景が浮かんできて。
「どわっ、う、うん、美味しかった、ありがとうな!」
ゆうなの肩を掴んで身体を離してしまう。
ゆうなは一瞬目を丸くしたけれど、
「ん、じゃあクリス呼んでくるね」
すぐに笑顔になって皿を片手にレコーディング室に繋がる階段を下りていった。

「………ぉ、なんか俺やばい?」

昨日からなんか………ちょっと………まず昨日ゆうなにプールで膝枕された時に………胸がですね、いや、何回もプール一緒に行ってんだけど、ほんとゆうな胸でかくなっててね?それが膝枕されて頭上でぷるぷるしてるんですよ?
んでね、それがいきなり俺の鼻先に押し付けられてね………俺の俺がだね!
いやいやいやゆうなだよ?
「たニョル?」
って、チャニョルってちゃんと発音できないぐらい小さい頃から面倒見てたゆうなだよ?そんな娘同然のゆうなに!最近忙しくてお姉ちゃん達と遊んでねぇからって俺は!俺の俺は!
って嘆いてたとこに、仕事急に入れられた挙げ句荒れまくりのクリスに散々振り回されて、おまけにクリスとルハンと絡むという最悪の撮影させられ………
の後、ルハンに厄払いとゆうことでお姉ちゃん達集めてもらったんだけど、まぁこれがまた貪欲な面子で………
「嘘〜もう終わり?」「ルハンと大違い、ほらもっと頑張ってー」「もぉ今からルーちゃん呼んでよ!」
うう、思い出したら泣けてくる。
明け方まで色々搾り取られてぐったりのところにまた急にボアヌナに呼び出され、撮影させられ、心身共にボロボロの身体でクリス邸に戻った。ら。
昼前だってのにまだゆうなは起きてなくて、慌ててクリスの腕からゆうなを連れ出して。昨日迎えに行った時に眠っていたから早くシャワーを浴びさせないと、とゆうなの部屋のバスルームに連れていくと。
「ニョル、香水の匂い凄い〜」
そう言われて一緒にシャワー浴びたら………や、今までも散々(以下同文)だったのに!
ほんとにいつの間にかCぐらいになってたんだよおおおおおお!
ちちちち乳首とかピンクベージュだし!
いや、前からそうでしたけどね!がっつり俺それ洗ってましたからね!でもでもでもそれがですね膨らんでしまうとですね!
も、正直昨日淫らな遊びをたっくさんしたお姉ちゃん達と何ら変わらなくて!!思わず唸ってしまった俺。
なのにゆうなってば、
「ニョル?洗いっこする?」
とか言って俺の背中に泡だらけの手と胸をおしつけてきて………!
いやいやいやゆうなですよゆうな(以下同文)ってもおっぱいはおっぱいで……!

「チャニョル?おっぱいって?」
「ほわぁぁっ、ぎょ、ギョンス!」
いきなり声をかけられて飛び上がると、俺のスマホを片手にギョンスが立っていて。
「さっきからスマホ鳴ってるんだけど」
「お、おう、すまん」
渡されたスマホの画面には『カイ』の登録名。
「おーなんだ、カイ」
『チャニョルヒョン?やっと出てくれた』
カイはボアヌナと同じくK国で知り合ったダンスサークルの後輩で、今はモデル仲間でもある。今日は俺とは別の撮影現場にいたはず。
「すまん、スマホ離してた。なんだ?」
『あのさぁ、チャニョルヒョンってクリスさんの家に居候してんだよね?』
カイ特有ののんびりした声がなんともムカつく事を言う。
「アホか、俺の家はちゃんとあるけどあいつの世話が大変だから仕方なく住んでやってるんだよ!」
『はぁ、そうなの。まぁどうでもいいや、今クリスさんのところになつきいるんだろ?ちょっとボアヌナから届け物あってさ、住所教えてくれない?』
ほんとこいつ昔っからマイペースつーか年上を敬わないつーか………
ほんでも何だか憎めないキャラで……
「はぁ、お前が?テミンは?」
なつきさん絡みにテミンが来ないなんて珍しすぎる。
『テミン今日は接待に駆り出されてんだよね』
「あー、宣伝部長だもんな」
『ほんと、組織に入ると面倒だよね。俺絶対フリーのままいよ』
うんうんと俺も頷く。
俺は籍だけルハンの会社にあるけど、仕事のマネジメントは全部自分でやってる。マネージャーなんかついて世話してもらうと気を遣うからだ。気に入らない仕事入れられてそれを断ったりしたら、マネージャーが困るとかしんどい。
まぁほぼクリスと現場が被るから、ギョンスが俺のサポートもしてくれてやっていけてるんだけどさ。
その分クリスの面倒も見てるからおあいこだよな。
「住所教えんのはいーんだけどよ、特別エリアだから申請いんだよな、かけ直すからちと待ってくれ」
俺は一度通話を切る。
「ギョンス、カイが届け物しにこっち来たいって言ってんだけど申請頼める?」
「ああ、それならカイ君も夕食どうかな?思ってたより作りすぎちゃったんだよね。デザートも僕が用意してたのとマフィンと二種類あるし。クリス、カイ君とは仲いいしゆうな以外皆面識あるでしょ」
ギョンスは手早く自分のスマホから警備会社に連絡する画面を呼び出しながら言った。
「あ、それいいね」
俺はスマホを持ち直すとカイにかけ、
「カイ、お前の生年月日と国籍とIDNo.教えて」
そう言いながら、ギョンスが出してくれた画面に指を伸ばした。
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