alf laylah

□フルハウス
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ゆうなside



私の朝は息苦しさと共に始まる。

「ダァディ………ううう重い………苦しい………起きて、せめて拘束といてぇ」
クリスはとても寝相がいい。寝る前とほぼ体勢がかわらない。とゆうことは、毎晩私を抱き込んで寝るので、私は毎朝187のでかちんの腕を持ち上げて起きないといけなくて。
「う、ううん………」
私にどれだけ腕をぺちぺちされても、起きる気配のないクリス。
寝付きはいいけど、寝起きは超悪い。
「もぉ、ダァディっ………!」
真上にある顔を見上げれば吹き出しそうなぐらいイケメン。
きりっとした眉に長い睫毛、朝日に輝き揺れる金髪の前髪が………
(ほんと綺麗な顔だなぁ………)
「………や、見惚れてる場合じゃなぁいっ!」
起きて仕度しないと今日は!
「ダディ、ほんっと起きてぇー」
渾身の力でクリスを揺すっていると、
「ゆうな?はよー、朝から元気だなぁ〜」
ガチャと寝室のドアが開いて、チャニョルが入ってきた。
「あ!ニョル助けてお願い!」
「あーほんと懲りない親子ねお前ら」
ずかずかとベットに寄ってきて、長い足でぼんっとクリスを蹴るチャニョル。
「うう、」
強引に転がされたクリスの腕の中から私を抱き上げてくれる。
「ふはー、助かった」
チャニョルの首に腕をまわしてしがみつくと、チャニョルは大きな目をくしゃって細めて笑った。
「下行くか、お姫様。皆待ってるわ」
「え?シウミン達もう来てるの?」
「おう、ルハンが腹へったってわめいて、ギョンスに朝飯作らせてる」
話をしながら、私を抱き上げたまま寝室を出るチャニョル。
チャニョルは歌手で俳優でもあるクリスと同じ事務所に所属する歌手。俳優もたまやってる。クリスの友達で共演もよくあるし、音楽活動に至ってはクリスの歌の作曲を担当することが多いので、うちにあるスタジオでほぼ住んでるような状態で。
クリスと同じぐらい背が高いチャニョルに抱き上げられて階段を下りるのは少し不安になるけれど、階段の下にギョンスの優しい笑顔があったから手を振った。
「チャニョル、足元気をつけて。ゆうな、おはよう」
「ギョンスおはよう」
エプロンをつけて菜箸を持ってニコニコしているギョンスはクリスのマネージャー。正直演技と歌以外は得意じゃないクリスのサポートをきちんとしてくれる人で、めろめろに可愛がるけど日常の世話をやいてくれるのは正直下手すぎる(だって髪結ぶのに7回もやり直しすんだよ!)クリスにかわって、まるでお母さんみたいに私の面倒を見てくれる。
「クリスと一緒にすんなよ、あーでもおっきくなってきたか?ゆうな、ん?ちょっと胸が………?」
チャニョルがそう言って私の胸を覗き込んだ瞬間
「下ろせ、馬鹿」
ぽこん、とチャニョルを殴ったシウミンがチャニョルの腕から私を抱き下ろした。
「おはよう、シウミン。こんなに早く仕事大丈夫なの?」
「ゆうなおはよう、うん、大丈夫だよ。
………よし、顔を洗っておいで」
私の頬に手をあてて、目を覗き込んで洗面所に向かわせるシウミン。
シウミンと会うと毎回される仕草。
これが体調を調べる為だって気づいたのは最近だった。
顔を洗ってダイニングに行くと、テーブルに座ってもごもごトーストをかじるルハンがいた。
「おはよう、ルハン」
「おー、ゆうな、はよー」
ルハンは、クリスが所属する芸能事務所の社長で、チャニョルと同じくなぜかうちによくいる。ルハン曰く、
『クリス演技と歌以外なんもできねーから見張ってねぇと駄目なんだよな』
ってことらしくて………
ちなみにシウミンはルハンの兄弟でなんと二人は大統領の息子!で(養子だそうだけど)、シウミンは第5秘書を勤めている。第5なので、表に出るとこは滅多になくて裏方の仕事が多いそうだけれど、ルハンがかなり
「ねーシウ〜このジャム旨いから食べろよ〜はい、あーん」
「や。自分で食べるから。ゆうな、飲み物なにが欲しい?」
シウミンにべったりなので、つい一緒に、ってなるみたい。でも、私が物心ついた時から面倒見のいいシウミンの方がルハンよりうちに来てくれてたし、クリスが長期の撮影の時は私を自宅に預かってくれたりしてる。
「んー、今朝はミルクがいいかなぁ………あ、カフェオレ飲みたい」
そう答えると、ぱっと顔を明るくしてキッチンに向かうシウミン。
シウミンはコーヒーが大好きで、バリスタの資格も持ってる。
うちでもいつも美味しいコーヒーを淹れてくれる。
「ゆうな、卵何個?」
キッチンからギョンスが聞いてくれて。
「んー1個?」
って答えると、
「ゆうなお前もっと食べないと………今でも細いのに………」
チャニョルが私の隣に座りながら、自分のお皿のベーコンをあーんって口に入れてきた。
「むぐ、、、んー、なんかね、最近食欲がなくて」
もぐもぐとベーコンを食べながら言うと、ルハンが
「恋でもしてんのか?まぁでも乳Cにはなったからいいんじゃねぇの?」
って、言って戻ってきたシウミンに思い切りどつかれる。
「うそ!うそ、恋!Cカップ?ゆうないつの間に!ママ許しませんよ!」
隣のチャニョルがわぁわぁ喚きだして、シウミンにまたどつかれる。
「「シウの拳骨痛すぎるぅ〜」」
二人が頭を抱えてテーブルに突っ伏すと、ことりと目の前にベーコンエッグとトーストが置かれた。
「とりあえず食べよう、ゆうな。なつきさん達が来るまでに片付かない」
「うん、ありがとうギョンス、いただきます」
私が手を合わせると、ギョンスはくるっくるっの、大きな目をまわしてにこっと笑ってくれた。笑うと口の形がハートになるのが可愛い。
トーストを食べていると、やっと頭を上げたチャニョルが涙目のまま私のベーコンを細かく切ってくれる。
「ゆうな、ジャムついてる」
向かい側から、シウミンの手が伸びてきて口元のジャムを拭われる。
「ゆうな、俺のオレンジやるわ、あーん」
ルハンがフォークに差したオレンジを鼻先に持ってきて。
「皆さん、雛に餌をあげてるんじゃないんですから」
コーヒーを片手に眉をしかめるギョンスに言われて、
「「「え?」」」
って、ハモる三人。
「………まぁでもゆうな食べるの遅いしね………今日はよしとしますか」
ギョンスは一人ため息をつきながらルハンの食べたお皿を持ってキッチンに行ってしまった。
「ゆうな、今日の服、部屋に持っていくよ」
シウミンがスマホをチェックしながら言ってきて。
「えー俺が選んであげるよ、ゆうな」
「馬鹿かニョル、きょーは恐怖の大王がくんだぜ、お前が選ぶギャル系の服なんて着てたらどうなるか!」
「だってゆうなは足が綺麗なのがいいのに!シウミンが着せるのって露出少なすぎ!」
シウミンはチャニョルとルハンのやり取りにはぁ、と溜め息をつくと
「ゆうながこっちで暮らせるかどうか決まる重要な日なんだからとりあえず二人共、大人しくしとけ。………いや、喋るな、特にチャニョル」
そう言って、
「ゆうな、先にゆうなの部屋にいるから」
ダイニングを出ていった。
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