□ジンジャーティー
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「ちょっとテミンたん、最初ぐらい一緒にいてくれんかのう」

あっと言う間に、テミンとなつきは二階に消えてしまった。

なんか二人の世界?私置き去り?
ちぃとむうっとしてしまう。
おまけに買い物した荷物もタッカンジョンも玄関に置いてってんじゃん!

「まぁまさか中学生となつきがどうこうとかないだろうけど」
なんかあったらただじゃすませんけどな……お姉さん許しませんよなつきを傷つける輩はっ。
ま、さっきのテミンたんの雰囲気からいって、いい遊び相手見つけたって感じなのかな。人懐っこい子みたいだしね。

靴を脱いで、がさがさと荷物を抱えながら廊下に入る。

「つか、寝室どこなんだろ……」

知ってるのはキッチンとリビングだけです、はい←

さすがに一夜を共にした仲とは言え、連絡もせずいきなり寝室に乗り込むのはありなのかな、とかぶつぶつ言いながらリビングの扉を開けると。

「げほっ……ごほっ…………」

リビングの窓際に置かれたソファの上にで塊が咳してる?汗じゃなくて、ブランケットにくるまったイトゥクがいた。

「……熊?」

茶色の(見覚えのある)もこもこした毛布からオレンジがかったブラウンの髪と目だけがかろうじて出てる姿はテディベアそっくりで。
鳶色でくりくりした切れ長の目がふ、と私を認め。

「……ごふっ……ぁ、おかえり……」

「あ、ただいま……ん?」

「あ、あれ?」

俺なんでこいつにお帰りとかゆっちゃったの、な目の色になって。

反射的に返事しちゃった私も私だけど、や、言い出しっぺ君やろ←

「すみません、キヒョンさんから伝言を頼まれてこちらに向かっていたらテミン君に会ったので一緒に入らせてもらいました。風邪いかがですか、薬飲みましたか?」

とりあえず同僚モード(あんまり親しくない)に切り換えて、ダイニングのテーブルに荷物を置く。

「あっ……ぼこっ……そうなんだ、まだ何も飲んでなくて……」

声がかなり掠れてて、咳もひっきりなしに出る。顔色も精気がないイトゥクが、よろよろしながら立ち上ろうとしたので慌てて駆け寄った。

「薬出しますから横になっててくださ、って、あっつぅ!」

めっちゃ熱あるやんこの人!
ブランケット越しに触れた肩の熱さにびっくりして、反射的に抱き抱えていた。

「ベッドどこですか、なんでこんなとこで、寝てんの」

「はっ……えっ……何か飲もうと思ってそのまま……ごふっ」

「あほか、寝室どこですか!」

「ろ、廊下出て奥の右です、げほげほっ」

よいしょとお姫様抱きにして、リビングを出て寝室に向かう。開きっぱなしのドアから部屋に入ると、部屋の広さに合わないシングルベットがあって、そこにイトゥクをおろし、シーツをかける。

「冷ピタ持ってきますね、唇かなり乾いてる……何か飲むものも持ってきます」

いきなり寝室に連行されたからか、ずっと目を見開いたままのイトゥクを残し、キッチンに戻る。

お湯を沸かして、その間に生姜をすりおろしたっぷりの黒糖と混ぜる。少しのお湯でよく溶いて、熱々の紅茶と合わせ、そこに少しだけガムシロップをおとす。

「はい、貼りますよ、ん、で、薬飲みますよ、お水です。あと、これも飲んでください、熱いからフーフーして。汗出ると思うので、着替えた方がいいかな、着替えどこにあります?」

薬やら飲み物やら持ってイトゥクのところに戻ると、まだぱちくりお目目だったけれど、かまわずバタバタと世話を焼き。

「えっと、あの……」

額に冷えピタ、首にはタオルぐるぐる巻きで立派な病人スタイルになったイトゥクに、着替えさせようとジャージズボンに手をかけたところで止められた。

「なんですか?」

「ごふっ……あ、あのね、森下……」

「?ほら、上も着替えたんだし、下も早く脱いでください、替えのやつこのズボンじゃないほうがいいんですか?」

「だから、そうじゃ、ごほっなくて、ほゆとっ……こっ……あんまり触られると、ねっ、ごほごほっ」

「は?とにかく、ぬ……おわっ……」

ぐいっとズボンを下ろしたら目の前に、もっこ……

「森下、手っ離してっ……」

「うわわわわわっ、すみませんっ」

がばっと体を離して俯く。でも脳裏にはばっちりくっきり先程のイトゥクのイトゥクさんがっ……!
ん?サイズの身長のわりにミディ

「あ、あのね、森下」

いきなり熱い指が顎にかけられた。
くいっと顔をあげられる。
目の前には真剣な顔つきのイトゥクがいて。

「僕達……順番逆すぎない……?」

……へ?

くっとイトゥクの指先に力が入って。

あ、あ、あら、なんぞこの雰囲気……

鳶色の潤んだ瞳と冷えピタのシップがゆっくりと近づいて……
 
BBBBBBBBBBBBBBB!!

ーこんなオチだと思ったよちくしょー!
このタイミングに電話かけてきやがったパボはどこのどいつだぁー!

ぼんっとイトゥクの体を半ば突飛ばし
気味にベッドに叩き込み、ポケットでうるさく喚き続ける携帯を掴む。

『あ、やっと出たっ』

「ごらーっやっぱり馬鹿チャンミン!貴様かぁー!!!とりこみ中だから切るど!」

『ヌナ!なにしてんですかっなつきは無事なんですかあの男なんなんですかっいつからなつきはあいつと』

「つかあんたなんで私の仕事用の番号知ってるの!またハッキングしたな!うちの会社セキュリティしっかりしてるからすんなってゆったでしょ!」

『ヌナがプライベート番号出てくれないせいじゃないですか!』

「あんたが鬼電話してくるのわかってたから電源落としてたんだよおおお、とにかく!いーとこだったのに!」

『いいとっ……?ヌナほんとなにしてんですかっ?どんな関係の上司なんですかっまさか社長の家じゃないですよねっこのあたりの住所の家は、』

「あーもーるっさい、なつき呼ぶからとりあえず待て!」

どうせ住所名簿もハッキングして家の絞りこみもすんでんでしょうが!

ばんっと液晶画面を叩くように通話を終えると、別の呼び出し画面をだし、

『今世紀最強の人たらし』

と登録された番号を押す。
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