□タッカンジョン
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あんながテミンのオンマになる少し前のお話です




月曜日の朝、出勤してすぐ秘書課のキヒョンに呼び止められた。
「森下さん、今日イトゥクさん風邪でお休みなんでしょ?水曜日までに会社に持ってきてもらいたい書類があるから頼んでいいかな」
「はっ?な、なんで私…」
「え、婚約してるんだよね?社長が重役達に朝いちで話してて、今誰が仲人するかとか揉めてるよ。やーじ、ごほんっ、浮わついた感じのしない森下さんが水面下でイトゥクさんとなんてねぇ、意外だけどおめでとう、あの人バツイチだけどいい人だもんね〜お幸せに!」

ちょっと待て。 
顔面好み100%のキヒョンに地味と認定されてたのは、まぁい、いい?として、結婚?つかまだ一回しかしてねぇわ(それも記憶なし!)プライベートの連絡先も知らない相手と結婚の話がなぜ、それも会社公認で決定し進められている?

「あ、森下いたいた〜お前今日午前中現場まわりして午後からイトゥクとこに直帰していいぞ。たくっ水くさいなぁそうなってたなら早く教えろよ〜せっかく掴んだ幸せなんだからな、大事にしろよっ課をあげて応援してやるからな!」
「ど、ドンヘぶ、部長、そ、その件実はごかっ…」
「やー、実を言うとイトゥク凄く心配でさ同期でいい奴だし。色々あったからあいつには幸せになってほしいんだよな」
「ほんと、皆喜んでますよね!」
うちの課で唯一の癒し皆のイケメンドンヘ部長にまで笑顔で言いきられ…

右も左も超イケメンに挟まれ祝福され…

「酔った勢いで一発やっちゃったの誤解されただけなんですよ、えへ☆」

って言えるおなごなんて。

「いるわきゃねぇよぉ…」
しくしく。チキンな自分がつれぇ。
しかし社長に見られた時点でやばいなぁとは思ってたけど、たった二日でこうなるとは。土日ひたすらショタゲーやってた自分を呪う…

「だってねぇ、テミンたんがねぇ…」

あんなキラキラリアル天使と遭遇してしまい、あまつさえぴたぴたくっつかれたりおて手にぎにぎされたりでもー脳内のショタコン欲がぱなくて!それをなんとか昇華させようと土日必死だったんだよ!

「イトゥクにも事情説明して対策考えるか…」
彼もびっくりするだろうなぁ…

午前中にまわれる現場は全部まわって。午後一時過ぎに、イトゥクの家の最寄り駅に着けた。

「風邪ひいてるなら何か買っていったほうがいいのかなぁ」
なんせ仕事用の携帯しか知らないからいるものとか聞けないけど、こないだの様子から色々準備したほうがよさそうだし。
スーパーで食料や薬を買い込んで、店を出た瞬間、

「ねぇヌナ、今日のおやつなに〜」

ぶぼっ 私の土日を消滅させた原因!が現れた!

「てっ、てみくっ」
「それうちに、でしょ?アッパのお見舞いだよね〜」
ありがとねって言いながらひょいって私がぶらさげてた荷物を取る。

ううっ・・・今日も、さらさらの栗色の髪につるつるお肌ぱっちりお目目ピンクの唇、うほほ最高っ。。。
じゃなくて!

「あっ、あのね、テミン君確かにお見舞いなんだけど、」
どうもこの子にも誤解されてるっぽいからちゃんと....

「ん?」

きらきらテミンたんの背後。の屋台で、なんか異様などす黒いオーラが・・・なんだあれ・・・動いてる人・・・?つか、あれ見たことある・・・顔が・・・

「タッカンジョン食うてる・・・?」

それも

「泣いてる?なつきっ!」

間違いなく、我が妹のなつき(大学生属性天然色恋音痴)が、なんでこんなとこで泣きながらチキン食うてるんだ!

「ちょっ、なつきあんたなにやってんの!」

それも屋台の端で立ったまま大盛りのチキン皿片手にむさぼるように大ぶりの肉に喰らいてて。はじめ人間ギャートルズか!
ああ神様花のように可愛らしかったなつきはいずこ!

「ふぇ・・・むしゃむしゃ、ぐじゅっ・・・ぐふっ・・・えっ、あんなオンニ・・・?」

私の声に顔をあげたなつきは、赤茶色のソースと涙と鼻水で可愛い顔がどろどろで姉の私も一瞬たじろく有様。

なのに。

「...ヌナ、ここのチキン美味しいから」

すっと白くて小さな手が視界に入ってきて。

「たくさん食べたくなるよね」

テミンの指に挟まれたハンカチがなつきの口元に押し付けられ。

「...ひっ...ふぇ......」

視線の先にはにっこりキラキラキラキラ天使テミンたん降〜臨〜!

「・・・・・」

なつきのただでさえでかい目が限界まで見開かれ。

うおっやべぇ瞳孔開きだした!


「なつき!そゆことじゃなくてあんた、なんでこんなとこいんの!実家にも大学にも関係ないでしょこのあたり!」

私の声に昇天しかけていたなつきがはっと我に返り、

「うあwぁぁん、あんなオンニぃ〜」

「ぎゃー抱きつくなっ、服が汚れるっ」

「せっ、先輩の家に、やっと行けることになっ、なったのにっ、ぐずっ・・・」

チキンの汁でベッタベタな指で触るなーこのコート高かったんだから!
しがみついてくるなつきを宥めながらなんとか事情を聞き出したところ

「えっとつまりは憧れてたサークルの先輩の家に呼んでもらえて、ここまで来たのに部屋行ったらサークルのメンバー集まってて、裸の先輩の横には裸の女の子が寝てて・・・そのショックでやけ食いしてたってこと?」

「ふえっ、だ、だって、先輩いいなと思ってる子しか家に呼ばないよって言ってたのに、私が来るのに前日に家でお酒飲んであの子となんてっって・・・・・・ひどいよっ・・・」

「たくっ・・・そんな男と親しくならなくてよかったってことだよ、ね、なつき」

「うわぁぁん・・・わ、私が泣いて帰ったのサークルの人達とかチャンミンにも見られたし・・恥ずかしいよおお・・・」

なつきの頭を撫でながら、その一言で納得した。

「宴会メンバーにチャンミンもいたの?」

「う、うん、同じサークルだから・・・奥で寝てたみたい…」

またやりやがったか。

てことは、そろそろ捜してくるな・・・・

「あ、こんなことろにいやがりましたね、なつき」

「ひっ、ちゃ、チャンミン・・・」

ぬうっと現れた高身長のイケメンがずかずかとなつきに近寄ってくる。
私は慌ててなつきを自分の背後に押しやり、チャンミンとの間に入った。

「あんヌナ、なんでこんなところにいるんですか、お?」

私に気づくと、これまたでっかい目をぱちくりさせる。元々目鼻立ちのくっきりした顔立ちが大学生になって幼さが消え、精悍さをまといだした。
うむ国宝級のイケメン。でも

「くそっショタ期終焉か私の癒しがまた消えた・・・」

「は?」

「あ、いやいや、チャンミン、用事があってこの駅に来たらなつき泣いてたから話聞いてたの。あんたはなにやってたの」

チャンミンは、なつきの実家がお隣さんという典型的な幼馴染で、外見も脳みそもハイスペック男子。なんだけど、性格に難ありというか、まぁなつきにも責任はあるとは思うのだけれど・・

「・・・僕は先輩宅の飲み会から帰る途中になつきを見かけただけですよ・・・」

お前、さっきいやがりましたね、とかゆうてたし。
額に汗がんがん浮いてるし。

「なつき、何泣いてるんですか。変なものでも食べてお腹痛い?僕車近くに停めてるので、送ってやってもいいけど、お?」

なつきに超惚れこんでるくせに、超ツンデレなんだよね。

幼稚園ぐらいの時から、なつきに近寄ろうとする男子に嫌がらせをし(それもバレないように)なつきと遊ぶと怪我をするという噂の原因であった彼は、なつきをどうにか孤独にしその時に手を差し伸べて、自分のところに来させよう、という試行錯誤を繰り返すのだけれど。
なにせなつきが天然で色恋に鈍いので(噂のせいで両親が小学校からは男女別教室の私立校に入れてしまったのもあると思うが)

「い、いいよ、チキン食べかけだから・・・」

いや、食い終わってから乗ってもいいし、持ち帰り使用にしてもらえばいいだろ。

って突っ込みたくなる程チャンミンの意図に気づかない。
むしろ情けないところを見られたショックからか、私の背後に本格的に回り込んだ。
その様子にがつんと眉間に皺が寄るチャンミン。ますますなつき怯える。
また、かよ、ほんと。
この二人はこんなやりとりを15年近く繰り返してる。
私は溜め息をつくと、チャンミンに近づき、耳元で囁く。

「計画的でしょ、宴会仕組んだの」

「ちっ・・・酒が入ったぐらいで適当な女とやるような男から守っただけですよ、褒めてもらうべきじゃないですか、お?」

小声で返してくるチャンミンが不憫でもあるけれど、さっさとストレートに好きだとゆうてくれりゃこんな面倒なことにならんのだから。

「せっかく会えたから、なつきと帰りたいし私が送るから」

おしおきだべさ。
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