One day
□魔王 5
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残るはクリスだった。
あんなはクリスへの罪の意識が四人のなかで一番強い。
これからも共に生き続けることを望むだろう。
クリスの存在を拒絶し続ける帝国をどう懐柔するか。
思案を重ねる日々。
唐突にあんなが告げた。
『 クリスに人権を そして自由を
それが与えられるなら 王位継承権を放棄します 』
「あんな様自分が何を言っているかわかっていますか、王位継承権を放棄すればあなたはただの貴族階級の立場になる。TVXQ帝国の指示に従うしかなくなるんですよ!!」
B国の洋館の離れの研究室。
膝から下が震え机に手をついて叫んだ。
そんなことをしたら。
ユンホは。王は。あんなを憎みきっている彼は。
「私を幽閉か追放……かな、それも覚悟しています。子供達の安全はユンホが誓ってくれた。あの人なら大丈夫でしょう……クリスにも同等の保証と生活を………それが得られるならもう私の今後はどうなってもいいの」
幽閉ならまた僕の管轄下に置けばいい。
ただ。
追放になった場合。
常に傍にいることができない。
「既に………ユンホに連絡をとりました。議会と審議して返答すると返信がきてる」
「僕に………僕を通さずなんてことを!」
あんなに詰めよってその手首を掴んだ。
薄茶色の瞳が僕を見つめる。
さらりと流れる黒い髪。
南国の日々で焼け小麦色になった肌に。
食い込む僕の白い指。
唇を重ねる直前。
あんなのパソコンがメールの受信を告げる。
あんなより先にキーボードに手を伸ばした。
『 申請を可決する 森下氏はK国への帰国を命ずる 00には帝国特殊生達と同等の処遇を認知する 』
画面に浮かんだ文字を見た瞬間、あんなを床に押し倒した。
「イェソ………ンっ?」
見開かれるあんなの目。
薄い唇を親指で押さえた。
あんなは………
形だけのものとしか………この儀式の………知らないだろう………
これからどこに彷徨うことになるのか。
この人は。
僕の腕の中に視界の中に在り続けることが。
ないの、なら………
父さん………
あなたは母さんを愛していたんだね………
性急な手つきであんなの身体を煽った。
何度も抱いている、理性を流し出せる動きも熟知してる。
あんなも自分の決断に下された宣告に哀しみを隠せなかったんだろう。
縋るように腕が僕の背中に回され。
閉じられる瞼。
僕を捩じ込む瞬間に。
あんなの下唇を咥え。
強く奥に差し込む動きに合わせ。
歯をたてた。
ビクッとあんなの身体が跳ねるのを押さえ付け。
腰を動かしながら強く強く。
唇を吸い上げた。
唾液の味に混じり。生ぬるい濃いものが咥内に流れ込んでくる。
それは明らかに僕の舌を喉を浸透していき。
じんわりと。
心臓が熱くなった。
僕の身体の下で全身を痙攣させているあんな。
その震えが僕を揺らす。
いや………
違う………
彼女の
心音が………
僕を揺らして………いる………
僕は唇を離すとあんなの口に手を当ててより一層激しく彼女を貫き果てた。
結びの儀式は一度だけしか成立しない。
僕の血はあんなには混じっていない。
そう。
僕は………僕達は相互ではなく………
僕だけがあんなの心音に共鳴し………
音を送り続ける………
僕が一人………彼女に絡む………糸………
それでも、父さん、僕は………
僕は………僕の命が彼女を支えるなら………
幸せなんだ………
母さんの為に………結ばなかったあなたなら………
わかってくれますよ………ね………