Dawn is invited from devil to the party

□第18話
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「そういえばリゼ、あなたが自分で服を作っていましたわよね?」


いつもの葬儀服に着替えたリゼにニナが尋ねてきた。


『はい。 このワンピースは自分で作り、ま…し……た…?』


最後の方が途切れ途切れになったのは、ニナが怖い顔でこちらに近づいてきたからだ。

眉間に深い皺を刻み、リゼをじーっと見つめる。


『な、何ですか?』


不満、ですわ‼


『え⁉』


脱いでくださいまし!


『い、嫌ですよ!この方が動きやすいんです!』


脱がせようとするニナに必死に抵抗する。

しかしニナも簡単に諦めてくれそうにない。

どちらも引かない状況が暫く続いたが、やがてリゼが折れた。


『…わかりました。

どこが不満でどう変えたいのか仰ってください』


「まずデザインですわ!

もっと遊んでもいいと思いますの」


リゼがいつも着ている葬儀服は前にボタンがいくつか付いているだけの黒のワンピースだ。

レースもフリルもないシンプルなもの。


『なんかリボンとか付けるのも面倒臭くて。

急いで仕上げたかったですし…』


「ならここにグレーのタイを付けてみるのはどう?」


『あ、それ良いですね』


「次はスカートの部分ですけれど…」


こうして始まったリゼとニナの話し合い。


「…ヒッヒッ…今度は小生の存在が忘れられているようだねぇ…」


ずっと話し続ける2人を葬儀屋は見守る事しかできなかった。





論争を繰り返しながら話し合った結果、数時間にリゼの新しい葬儀服が完成した。


「黒のブラウスにチャコールグレーのタイ。

スカートは一見フリルがついただけのように見えますけれど、ここにある紐で……結ぶとドレープが作れますのよ!

黒のペチコートがチラ見えしてセクシーですわ!」


『フリルが邪魔な時は紐でスカート丈が調節可能という事ですね。

これなら動きやすいです』


「ああ、リゼとの初めての共同作業!

新たなイメージが湧いてキタわよー‼」


ニナは興奮したテンションのまま紙とペンを取りだし猛スピードで描き始める。

デザイン画が何枚も描かれていく。


「また新作が出来たらお呼びしますわ!」


もう十分です!


(次こそ地獄から逃げなければ!)



***



普段使いしそうな物を選んだが、ニナに推されてほとんど貰う事になってしまった。


(部屋にギリギリ置けるくらいだろうか…)


ニナが手配してくれた馬車に揺られながらリゼはぼんやりと思った。

馬車の窓からは夕陽に照らされたロンドンの街並み。


「ヒッヒッ…たくさん貰ったねぇ…」


『なんだか申し訳なくなってくる。

ハァ…ただ百合を買いに行っただけのはずが…』


この前は本を返しに行っただけなのにダンスパーティーに参加する事になってしまった。

何故最近何かと巻き込まれやすいのか。


『すっかり忘れていたが、百合は品切れだった。

また明日改めて百合を買いに行くよ』


「ありがとう、リゼ」


『お礼なんて言われるほどじゃない。

アンダーテイカーだって仕事があったのに…』


「仕事……あっ」


しまったと言うような声をあげる葬儀屋。


『え、もしかしてアンダーテイカー…』


「……すっかり忘れていたよ………」


葬儀屋はがくりと頭を垂れた。

徹夜コースかねぇ…とぼやいたのがリゼの耳にも届いた。


『……帰ったらハーブティーを入れるよ』


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