刀剣乱舞【短編】
□慣れ
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初めてまんばくんを見たとき、本当にきれいな人だと思った。
「山姥切国広だ。……何だその目は。写しだというのが気になると?」
「き……綺麗……」
私は、ボロ布を目深に被ったその青年を見て思わず声に出してしまった。
「綺麗とか……言うな……」
照れているのか、嫌なのかわからないが、青年はそう言うとさらに布を引っ張って、顔を隠してしまった。
「あ、ごめん。つい……本当に綺麗だと思ったから……」
「っ……!」
そう言うと、山姥切はスタスタと歩いて行ってしまった。
「あ、待って!本丸案内するね!」
私は、急いで山姥切を追いかけた。
それからというもの、私は毎日まんばくんに“綺麗”と言っている。
彼の照れ方がかわいくてかわいくて。
そんな私の目の前に愛しのまんばくんが現れる。
「おはよう!まんばくん!今日も今日とて綺麗だね!」
ニコニコしながら近づいていくと、まんばくんは少しも表情を変えずに“おはよう”と答えて大広間に行こうとする。
「え!?ちょっと待ってちょっと待って!!!なんで照れないの!?」
そんな私をまんばくんは呆れたように見る。
「あれだけ毎日言われていたら誰でも慣れるだろ。」
「な……慣れ……」
そんな……私はあの照れた顔が見たかったのに……!
盲点だった。なぜ気づくことができなかったのか。
「あんたは今日も忙しないな。」
「え!?なんで?」
バッと顔を上げるとまんばくんはふわりと微笑んでいた。
あ、ヤバい。今絶対顔赤くなってる。
「毎日百面相してるみたいだ。今もな。」
「そんなに顔に出ていたのか……」
毎日とな。分かりやす過ぎかよ。
顔に手を当てて下を向くと、顔を上へと向けさせる。
「そんなあんたが……かわいいと思ってる」
「はっ!?な……何!?」
い、今あのまんばくんが私のことをかわいいと……!?
顔を真っ赤にしながらまんばくんを見ると、彼はすでに歩き出していた。
「朝餉食べ損ねるぞ」
「ちょ、ちょっと!?」
これ以来、私はまんばくんに綺麗と言わなくなったが、まんばくんは私のことをたまに“かわいい”と言ってくれる。
だが慣れることはなかった。