刀剣乱舞【長編】
□第1振 初めての任務
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「それじゃあまたねぇー!」
「うん!また明日!」
私は友達と別れてまた歩き出した。
私はごく普通の学校に通うごく普通の高校生だ。
それがこの日から突然生きる世界が変わってしまった。
「あれ?何だろう……」
家の近くまで来て、自分の家の前に見知らぬ黒い高そうな車が停車していた。
親からは何も聞いていないので、取り敢えずいつものように家に入ろうとする。
「ん?」
こんな時間に家に誰もいるはずが無い。
今はテスト期間中で昼に帰ってきている。
両親は仕事に行っているはず。
鍵が開いているなんて不自然なのだ。
私は自分の家にも関わらず、恐る恐る玄関の扉を開けた。
「ただいまぁー……」
中の様子をうかがうと、母親の靴、父親の靴、そして見慣れない黒の高そうな靴が玄関にあった。
「そんなこと出来るわけ無いだろ!!!」
丁度靴を確認したタイミングで、リビングから父親の怒鳴り声が聞こえてきた。
一体何があったというのだ。
「お父さん?どうしたの?」
そう言いながらリビングの扉を開けると、父と母がソファーに座る向かいに、見慣れない高そうな黒いスーツを着た男性が座っていた。
「あ、奈恵お帰り」
「ただいま、お母さん。ねぇ、お父さんどうしたの?」
「どうしたもこうしたもない!娘はやらん!!!」
父はすごい剣幕で男性のことを睨み付ける。
「何?どうゆうこと?私どっかに連れてかれるの?」
「申し遅れました。私こういうものです。」
その男性は名刺を渡しに差し出した。
「……政府の方が何故家に?」
男性はよくぞ聞いてくれましたとばかりに笑顔でとんでもないことを言った。
「単刀直入に言いますと、貴方には審神者として私たちに力を貸して欲しいのです。」
一瞬何を言っているのか分からなかった。
「……は……!?なんで私なんですか!?」
「貴方の霊力は並みの人よりも質が良く多いですからね。それにこの家庭の事情を考えると悪くない話だと思います。」
政府の人は笑顔を崩さずにそんなことを言う。
この人はこの家の何を知っているというのだ。
「どうゆう事です?」
「知らないのですか?家計が火の車も良いところですよ」
「なっ……娘には関係ないでしょう!?」
母親がヒステリックに叫ぶ
火の車……?どうゆう事……?何それ、聞いてないんだけど……
「審神者というのは極めてなれるものが少ない職業です。その分給与もかなり高い。それぞれの成果によりますが、貴方ならそれなりの成果を上げてくれるでしょう。」
「何が言いたいんですか……」
口元だけに笑みを浮かべ、目は真っ直ぐ私のことを見るその男の顔はとても気味が悪かった。
「何が言いたい?分かっているのにそんなこと聞くんですね。貴方はどうしたいんです?家族を救いたいとは思いませんか?」
「私は……」
父と母が耳を傾けては行けないと言っている声が聞こえてきた気がしたが、正直この世界で生きるのも疲れてしまった。
ならば……
「お父さんお母さん、ごめん。私行くよ」
「そんな……!私たちのために……!」
「勘違いしないで!これは全部私のため……私は審神者になる」
それを聞いた政府の男はニコニコとしながら手を合わせた。
「良かったです。貴方ならそう言ってくれると信じていましたよ」
この男は嫌いだ。