明日もまた会えるよね。

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見てる…。



見てる…。



見られてる…っ!!!


「おい大丈夫かよ。お前がハンターになるって言うからここまで来たんだぞ?サクラ」

ふわふわの猫っ毛に鋭い紫色の瞳をした彼、キルアは足でスケボーをいじりながらそう言った。

サクラ

それは私の名前だ。

サクラ・ゾルディック

それが私が今名乗っている名前。


それにしても…さすがキルア。

さっきから子供がいるのが珍しいのか、周りの人からの視線が痛いっていうのにキルアはいたって自然体。

私も見習わないとっ…!



…とは思うけれど…

さすがにこれだけはどうにもならない。

私の過去は今日出会った人間を素直に受け入れられるほど気楽なものではなかった。

だからこそ知らない人にジロジロと見られれば震えるし、自然と目尻も熱くなる。

「うん。ごめんなさい、キルア…。」

私はそっとキルアの後ろに隠れるとキルアの服の袖を必死に握った。

「ま、どうせやることもなかったからいいけどさ」

私が泣きそうになっていることに気付いたからか、キルアはいつもより優しい口調でそう言ってくれる。

その声に私は少し安堵してキルアの服を掴む力を弱めた。

「ついてきてくれてありがとう。」

キルアにそうつぶやくと同時に、私の中にはお母様とお兄様への申し訳なさも湧き上がっていた。

「ね、ねぇキルア?お母様とお兄様、大丈夫かな…?」

家を出るとき、キルアはそれを止めようとしたお母様と2番目のお兄様をナイフで刺した。

私はそれがずっと気がかりだったのだ。

「さぁな。でも、まぁ大丈夫なんじゃねーの。」

自分の家族をナイフで刺したというのにまるで他人事のようにキルアはそう答えた。

けれどそれは私とキルアにとっては当たり前のこと。

…“人の死”は日常的なこと。



それにキルアに至っては生まれた瞬間から殺し屋として生きる人生を決められていたのだから、お母様たちに拾ってもらい、中途半端にこの道に入った私とは心構えが違う。

「そっか…。」

それ以上聞くのは愚かなことだと思った私は大人しく口をつぐんだ。
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