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□クラリスロマイシン
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ヒーローとして身体能力の高さはもちろんのこと、頭脳明晰、容姿端麗、ラジオにテレビに雑誌に引っ張りだこのシュテルンビルトの王子様、こと、今をときめく人気ヒーロー、こと、僕、こと、バーナビー・ブルックス・Jr。ちなみに同じ眼鏡を五つ持っているのだが、それは置いといて、今僕はそれなりに困った状況にあった。
まず頭が痛い。少しでも首をひねろうなんざ、容赦なく脳みそが悲鳴をあげる。それに寒気が止まらない。もう夏が近づいているというのに、どうにか暖を取ろうと最近薄手のものに変えてしまった掛け布団にくるまっている。さらに、身体が怠くてたまらない。もう腕の一本も動かしたくないほどだった。

要するに僕は体調を崩してしまった。今日はもう、とてもとても、街を救える気がしない。
熱で朦朧とする意識の中で考える。
今日だって普通に僕は仕事だ。いつ事件が起きるのかも分からない。でも僕は今日会社にすら行ける気がしない。これを誰かしらに伝えなくては。

腕を伸ばして端末を手にとって、必死に連絡先を引っ張り出す。元々登録されている人数も少なかったので、すぐに見慣れた名前を見つけた。取り敢えずメールを送ればいいか。あぁ頭が痛い。もう全体的に身体が痛い。こんな本格的な風邪、何年ぶりだろう。
げほごほと咳き込みながら、真っ白な画面に打ち込む文字の羅列を考えた。
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