曲パロ
□我々だ×くるりんご
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白い白い実験室。
真っ白な実験室。上の方では、科学者たちが笑っていた。
俺の膝には、シャオロンがスヤスヤと安心したように寝ていた。吐くのに疲れたようだ。俺はなでなでと彼の頭を撫でてやった。
厳重にしまっている重たいドアを見つめた。あの扉の向こうに行った兄さんは元気にしているだろうか。
俺たちがいるここは、機械ばかりの白い部屋の中。シャオロンを起こさないように、真っ白なテーブルに手をやった。
そこにはたくさんの苦いクッキー。おやつにしながら食べる。
ボリボリと静かに食べていたつもりだが、シャオロンは目を覚ました。俺にもちょーだーいと言ってきたので、俺は
ト「ああ。ええでほら。」
とシャオロンに渡した。シャオロンは体を起こし、モグモグと苦いクッキーをほおばっていた。そして、二人で外を眺めていた。
すると途端にクッキーを食べ終わったシャオロンは口を開けた。
シ「いつか、あの丘を越えてその向こうでふわふわ羊と踊りたいな!」
ただおれはそっと頷いた。
おれは知っていた。だからこそあれは壁に描かれた絵だよなんて。
言えるわけがない。
いーよ。いいよ。別にモルモット(実験台)の気持ちなんてわかんなくていいよ。
いーよ。いいよ。尻尾が切れた金魚(実験台)すくちゃったってもいいよ。
俺はふと上を見上げた。
ああ。俺の世界におしまいが訪れるまで。
淀んだ空気を口から息を吸って吐いていかなきゃいけないんだ。
ガタガタと震える兄さんに布団をかけてあげる。息切れしていて、苦しそうだ。ああ。怖いんだろうな。
注射が嫌いな兄さんの代わりに俺は自分を売ってでも前に出る。痛いのは嫌だけど。だめだ。守らなきゃいけないんだ。
その後大人たちはじりじりと近づいて、俺の腕を掴み、扉の向こうへと連れて行かれた。兄さんはごめん…と震えた口でかすれた声で。
そのまま俺は何もないような密室空間にいた。音は鳩時計の秒針の音だけ。罰として24時間閉鎖空間。鳩時計のチクタクなる音がやけに耳に張り付いていた。
俺はやっとその部屋から出られた。そして、兄さんやシャオロンがいる部屋に連れて行かれた。そこには、不安の顔色を見せる二人がいた。
ト「兄さん。シャオロン」
兄「トントン…」
ト「ほら。一緒に話しでもしよか?」
シ「うん!」
兄「うん。」
兄さんは絵本を俺に見せてきた。兄さんは話し出した。
兄「きっとこの絵本みたいに、神様が僕たちを外に出してくれるよ」
二人に挟まれた俺はただそっと微笑んだ。
僕らは人間じゃないから無理だよなんてね。
言えない。
いーよいいよ。モルモット(実験台)の気持ちわかんなくてもいいよ。
いーよいいよ。汚い服真っ赤なお花で埋めちゃってもいいよ。
あぁガラス越しの別世界から降ってくる
蔑んだ目をすっとみた。
ぱっと暗くなる部屋。俺は、少しビクッと肩を動かした。停電?真っ暗闇だ。この施設の生命装置が止まったみたい。ただ俺はじっと目を凝らした。
怖がりのシャオロンと兄さんは俺にしがみついた。
シ「どうしようどうしよう」
兄「怖いよ…」
ト「きっと平気やで」
遠くでドーンというはるか昔に聞いた懐かしき花火に似た音。ぐらりんぐらりん、衝撃卒倒。その隙間から火薬の匂い。科学者たちは死んだのだろうか?暗くてよく見えないが友人の声以外はなにも音がない。
ああ。泣いて叫ぶ仲間に埋もれながら、崩れる壁の絵をぼーと見ていた。
いーの?いいの?壁の向こうの酸素肺に入れちゃっていいの?
いーの?いいの?レーザー線じゃない光浴びちゃってもいいの?
ああガラガラと崩れた壁の先に
青空越しの神様を見た。
「…!君達、怪我はない?」
ニコリと死んだ魚の目を細めた彼はまさに神様だった。