Noel

□長い話
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あるにあ視点
これはもう昔の話。俺がまだ幼い時の話。

あ「ね、聞いてくれるよね、ラムザさん」

ラ「いや逆に聞かせてくれ。あるにあ」








今ここで同じ空を抱いているはずなのに、いつから僕等はすれ違ってしまったのだろう

世界がぐらっと歪んだ。

仄暗い城壁で淘汰した。
ガス臭いこの街に生まれて
俺らまだ草原の色も匂いも知らない
看守「おい!しっかりしろ!152番」
名前では呼ばれない。というか名前すらもうない。番号がついた俺たち。
あ「はぁ…今日も刑務作業…疲れたね」
俺は秘密の部屋で彼に話しかけた。
ジ「ああ。そうだな。あー疲れたなぁー!!」
眩しく笑う君。おでこにゴーグルをつけてる。俺はいつもおどおどとしていて根暗だ。ゴーグルを首から下げている。
あ「俺…外に出たいなぁ……」
彼はきょとんとした顔だったが、次第に笑顔に変わっていった。
ジ「まぁ……ここでずっと救いを待ってても、モノポリーが上手くなるだけだしな」
君はそう笑っていた
その日は2人で眠りについた。


朝、騒がしい。と目をこすって起きれば、群衆の悲鳴。響く銃声。
あ「あれ…ジャンク…起きてたの?」
彼は目の前の檻越しの光景を見つめていた。酷い。酷い。俺は思いっきり目を瞑りたくなった。
何を命と言うんだろう
白い息混じりで君は呟いた
ジ「逃げよう」

あの頃俺らは夢を見ていた。
この黒い檻の先には温もりと愛がきっとあるんだって。そんなものありもしないさ。なんてわかってたけど。
ジャンクと一緒に見た閉じた窓の向こうへ飛んでいく夢を見るのも 何回目だったっけ

あ「ジャンク……」

君はいつの間にか俺の隣から消えていた。俺ももう18歳だ。俺は腰を上げた。
看守「刑務作業だ。」
ジャンクもこんなつまらない人物になってしまった。

遥か遠い思い出の話。ジャンクが自慢気に見せてくれた、馬鹿みたいな設計図ただの子供の空想。
そして手招くジャンクに釣られてたった今目の前にあるのが


あ「あ……」




あの日の飛行船だ
ブーブーまったく五月蝿いなぁ。
だんだんと遠ざかるブザーにザワザワと騒ぐ看守達。バンバンと発砲の合図が聞こえてきた。
ジ「ここだな」
あ「あれ…ジャンクじゃん?」
僅かな隙間から朽ちた天井を彼は抜けた

あの頃俺らはいつも夢を語っていた
このでかくて汚く暗い檻の上から 
ゴミの様な都市を見下ろすんだろ?
あ「はぁ…はぁ…着いた。ここだ」
錆びたスロットル。
骨が折れるくらいに
目一杯押し込んで今 
あ「さぁ現実を突破しよう」

ジャンク視点


あ「 子供の頃、この瞳が確かに捉えていたモノを」

ジ「おい、どこ行く。あるにあ!!」
周りのものが邪魔で見たくないものそれを全て消すために俺は1人で目隠しをしていた。もう差別される囚人は嫌なんだ。あるにあ。本当にすまないと思っている。
あ「ジャンク…」
振り返るが誰もいなかった。
ジ「あるにあ…」
赤く光るランプ…警告のサインか。
不明な素因。
止まらぬ光るエラーランプに。
顔色変えず 高度上げて君は

あ「見て見ぬ振りをするのが大人になる事だというのならさ、」

笑う

激しい突風が吹く。
ジ「あるにあ…!!お前それはっ…」
息を飲む。

あるにあ視点
エンジン音が気持ちいい。
エンジンがヒートして 機体がどうしたって?
あ「うわぁ……」
いやいや全くもって気にもしない程に 
トリップしてしまう大空は偉大だよ。

あ「あれっ?なんか落ちてね!?やべっやべっ!!」

ジ「あるにあっ!!!」
あ「あれっ…?ジャンク目隠し…外したんだ」
聞こえないほどの小さな声で呟く
身ごとどっかに 吹き飛んでしまったって
ジャンクが指をさした。なんか眠たいな…
まぁ、死んだら死んだでもさ
これはこれでもう いいんだって思っている

あ「 僕は一生、子供のままだって構わないさ」
どこかで誰かが言った。
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