お話

□右手に銃を左手にも銃を
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艶やかな黒髪。だが、一部が白色の髪の部分があった。黒と白のはずなのに全く不自然さも感じさせない。窓からの光で少し光った。
カウボーイハットにウエスタンブーツと、ウエスタンスタイルの格好で、勿論腰には銃をしまうガンベルト。
ちなみに、よく言うテンガロンハットはカウボーイハットの一種でしかなく、間違いらしい。
それは置いとき、彼はもの凄く不機嫌そうな顔で、目の前の扉を開いた。
木の柱に、一人の青年が眠そうに寄りかかっていた。彼もまた、ウエスタンスタイルで身を包み、ガンベルトが腰に巻かれている。
そんな彼を見ても黒髪の青年は表情一つ変えずに前へ進み、木造の家を出た。

「あ、おはようございます。リヒトさん。」

ふぁっとあくびを一回。黒髪の青年と茶色の髪の青年の周りを風が抜けた。
木造屋根でできた影を踏み、黒髪の青年は地面に足を降ろし止まることなく歩いた。茶髪の青年もその後を追う。

「随分と眠そうだな。」
「昨日もまた椿の仲間が夜に来たんですよ。リヒトさん何度起こしても起きなかったじゃないですか。」
「誰だろうが俺の眠りタイムは邪魔させねえ。」
「保安官として、それ言っちゃ駄目なやつですよ。」

リヒトと呼ばれた青年を、半分心配そうな半分あきれた様な目で顔を覗き、ため息をつく。
いつもの事か。なんて考えて忘れようとする。

「おい真昼、今日は何で集まるんだ。」
「え、知らないで来たんですか?」
「お前は、起きたらすぐに着替えて家を出てこいって昨日言っただけだろ。知るわけねえ。」
「それでも普通話くらい聞かされてるかと…」

誰かから。と真昼と呼ばれた青年は言いそうになったが、リヒトが自分以外としっかり話しているところなんてあまり見ないな。
と、思い出し、口をつぐむ。
ぼっちな訳ではないだろうが、こんな性格だ。近寄りがたいのだろう。

「えっと、新しい保安官を決めるため選挙こないだしましたよね。」
「ああ。」
「その結果を見に行くんですよ。」

「そうか。」とだけ呟き、再び沈黙が訪れた。意味があるわけでもなく。

周りの建物は木造の物ばかりで、景色も遠くに荒野が見えるくらい。
この地域は人口が少なく、警察。なんて程の人材がないため、やって来るならず者やガンマン、などを保安官が取り締まっているのだ。
リヒトと真昼もその中の二人だ。
上下関係でいえばリヒトが上。真昼がその下。と考えた方が早い。実力もリヒトが上。のはずなのだが、

「天使見習いたちを俺が徹底的に鍛え、必ず天使にして見せる。」
自信気に話す姿が真昼のため息の原因になる。
「はあ、そう、ですか…」

今の会話通り、メンヘル思考のリヒトに真昼もかなり世話を焼いてしまう。そろそろ嫌になってくる頃なので、今日会う保安官に自分の立場
やってくれないかな、と、真昼の本音だ。

どの建物もさほど変わらない見た目なのだが、二人は行き慣れたかのように(もちろん何度も行っている)
一つの建物に近づき、扉を開けた。
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