お話

□もっと君に近づきたいんだ。 3
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聞きなれた掃除機の音が部屋に響く。
何年もコイツといるせいで学校がある日ぐらいゆっくりしろよ、なんて言葉も出ない。
通じないことはクロ自身も理解しているからだ。諦めているってことだよ。
「真昼。」
「んー?どうした?クロ。」
掃除機を止め、真昼がクロの瞳に視線を送った。名前を呼んでは見たものの聞きたいことなんて何もない。
真昼は首をかしげクロは必死に質問を考える。
お前の声が聞きたかったんだ。なんて言ったら真昼はきっと可愛い反応をするだろうが、
そんな勇気はクロにはない。
「あ、あー…」
「なんだよ。ハッキリ言えよ。」
掃除機に視線を戻し掃除を再開しようとする真昼にクロがあっ…と小さく呟く。
何か、何か、…

「オレのこと好きか?真昼。」
ハッキリとした口調で話しかけた。一点を見つめると動きが止まり部屋に静けさが訪れる。
「どうしたんだ?いきなり、」
ニコッ笑顔をつくりクロに向けた。
「いや…、愛情確認?」
「はは!!なんだよそれ!!」
腹を抱えて笑い、持っていた掃除機がガンッと床に落ちた。
けど、真昼の何かが違う。何年も一緒にいるせいで、しかもそいつが恋人だから、違和感がクロを襲った。

何かがおかしい。ゲームにさえ集中が働かず、ますます真昼が気になる。
真昼は相変わらず家事に没頭していた。何も変わらない風景のはずなのに。違和感が。
オレがおかしいのかもしれない。とクロも考えはするが首を振る。
「クロ〜!食器取ってくれー!」
「自分で取れよ…」
「肉焦げるだろー!」
キッチン横の食器棚を開け、二人分の食器を出した。「ありがと。」と真昼がクロの方に視線は送らず礼を言った。
「今日は頑張ってハンバーグの中にチーズいれてみたぞ!」
「…うまそうだな。」

真昼はハッキリと。クロはボソボソ小さく。「いただきます。」と声を合わせた。

「クロ!」
食器を片付けようとした途端に真昼がストップをかける。
「あのな、先にいいか?」
「あ、ああ。」
口を閉じては開きを繰り返し、何か話したそうな顔をした。
「…言っていいぞ?」
「あ、え、っとな…」
言いたいことがあるのに隠してたのが違和感だったのか?何も話さないからそんな事を考えておく。
「さっきクロが、俺のこと好きか?って聞いてくれて、嬉しかったんだ。
ああ、クロも俺のこと好きなんだなって思えたからさ。」
「まあ、恋人だからな。」
真昼は頬を赤くしつつ、話を続ける。
「俺、ずっとクロと一緒にいたいし、クロに寂しい思いはさせたくないんだ。」
「そりゃ…どうもな。」
「だから、俺、
クロの下位吸血鬼になりたいんだ…」
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