お話

□もっと君に近づきたいんだ。 2
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「人間になりてえ。」

オレは目の前に座る椿にそう話した。
「…。」ゴホッ!!ゲホッ!!!
「あーあ。何やってんだよ…」
「それはこっちのセリフだよ!何!?いきなり呼び出しといて!!」
「うるせー…耳いてえ…。」

麦茶を吹き出した椿に、真昼ならきっとここでふきんを渡すだろうが、オレはそんな優しくねーし、
とうの本人はスーパーのタイムセール遅れるとかどうとかで、出かけている。

「ああ、笑えないよ。面白くないとかそんなセリフさえ言えないよ…。」
「別にお前を笑わせるために呼んだんじゃねーよ。」

オレがコイツを家に呼んだのは最初のセリフ通り、オレは人間になりたい。

「で、何、なんで人間なんかになりたいワケ?答えによってはまた兄弟戦争起こすよ?」
「意味わかんねえ…」

椿たちとの最終決戦中、オレは真昼に好きだと言った。
今言うべきかと思ったがもしかしたらこの戦いで真昼は死んでしまうかもしれない。(まあ死なせねえけど)
そう思うとつい口に出ていた。
答えは「YES」だった。
その時の真昼がマジ天使すぎてその後ニートらしからぬ本気を出したのだが。

まあ、今の状況を見れば決着がどうなったかは分かるだろうし、めんどくせーし言わねえ。

人はいつか死ぬ。そんな事とっくの昔から分かっていた。
真昼もいつかオレの前からいなくなる。
どうしようもなく、それを怖く感じた。
だからオレは、

人間になりたいと思った。

「ってわけだ。人間になれる方法知らねーか?」
「知らないよ。知るわけないじゃないか。」
「使えねー…」
「兄さんって城田真昼のことになると急に性格変わるよねー。」

麦茶の入ったコップを片手に持ちニヤッっと笑いかけられオレはため息をついた。

「じゃあ、どうすれば真昼と生きられるんだ。」
「…いっその事城田真昼を下位吸血鬼にしちゃえばいいんじゃない?」
「…!」

それは思いつかなかったみたいな顔をオレがしていることは自分でもわかった。

「あっれえ、兄さん思いつかなかったの?あはははっ!僕って天才〜!?」
殴りたくなるような笑い声はスルーして脳内で考えをまとめようとする。
考えてもキリがなかった。

「だめだ…それは。」
「ええ〜?…なんで。」
ハイテンションな声のトーンが真面目なものに変わったのはオレにも分かった。
「あんなめんどくせー人生、真昼には味合わせたくねえ。」
「まあ、日光にも当たれないし、めんどくさいよね。下位吸血鬼は。」

例え一緒に生きられるとしても真昼に嫌な思いはさせたくねえ。それだけだ。
椿はコップはテーブルに置くと頬杖をつき笑った。

「けど、嫌かどうかは城田真昼自身が決めるんだよ?兄さん。」
「…真昼がそんな事言うか分かんねえだろ。」
「まあねー!」
あははは、と部屋に笑い声が響く。近所迷惑だ。
そんな事気にしねえ奴ってことは承知の上だが。

仮に真昼から言われて、その時のオレがなんて返すかは今のオレにはわからねえよ。

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