短編集
□僕のヒーローアカデミア
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「ボス、ほかの連中は?」
屋上へリポートでは、手下のパイロットがウォルフラムを出迎えた
「警備システムが再起動する前に出るぞ」
「「は、はい!」」
ウォルフラムの胸で意識を取り戻したデヴィッドが吐き出す様に呟いた
「……私を殺せ…」
「もう少しだけ罪を重ねよう。その後で望みは叶えてやる」
ヘリコプターの後部へケースを置き、ウォルフラムも乗り込もうとした時、声が響いた
『待て!』
立っているのも辛そうな亜夜が屋上出入口の扉に凭れながら追いかけて来た亜夜が叫ぶ
『博士を返せ!』
「……!!」
「なるほど、悪事を起こした博士を捕らえに来たのか?」
『違う!私は博士を助けに来たんだ!!』
そう一喝し、ワン・フォー・オールの力を全身に行き渡らせながら飛び出す
「犯罪者を?」
ウォルフラムがヘリポートの床につき、向かってくる亜夜を鉄柱で襲う
『私は皆を救ける!博士も救ける!』
亜夜は間髪入れず、襲ってくる鉄柱をジャンプして避けながらウォルフラムへと駆ける
「お前何言ってんだぁ!?」
『うるさい!ヒーローはそうするんだ!困っている人を救けるんだ!!』
激情のまま叫びながら、息もつかせぬほどの勢いで襲ってくる鉄柱を避け、破壊する亜夜にウォルフラムは不敵に笑って言った
「どうやって!?」
『!!』
亜夜の目が見開かれる。ウォルフラムは亜夜を見ながら、後ろのデヴィッドへ銃口を向けていた。デヴィッドは苦し気に亜夜に向かって叫ぶ
「私はいい…逃げろ…」
悔し気な顔で鉄柱から降りて、警戒する亜夜にウォルフラムはふてぶてしく笑った
「まったくヒーローってのは不自由だよなぁ!たったこれだけで身動き取れなくなる」
次の瞬間、ウォルフラムはあろうことか亜夜に銃口を向けた
「じゃあなぁ、ヒーロー!!」
バンッと、銃声が轟いた
亜夜の脇腹に向かって
『ガハッ…!』
亜夜の脇腹に吹き出るように出た紅い色を
そのまま重力に逆らう事無く地面に落下した
「どっちにしろ、利口な生き方じゃない。出せ」
そう吐き捨て飛び立つヘリ。亜夜は腹に力を入れると、ズキリと痛んだ。しかし、今は博士を返す事が最優先だと、体を震え立たせる
『…?!』
浮き上がり、飛び立つヘリ。遠ざかるヘリを見ながら思い出す。ウォルフラムは金属を操って攻撃するときはいつも、直接手で触っていた事を
『(あいつは手で触れないと個性を発動できないはず)』
ヘリの中で個性を使えば、揺れて飛行に支障をきたす。それならきっと個性は使わない。亜夜は全身に力を籠め、空へと伸びている鉄柱をダッと駆け登り、ヘリに向かって思い切りジャンプする
機体がバランスを崩す中、亜夜は必死に振り落とされないように掴まる
「……君は……!」
揺れる機内で目を疑ったデヴィッド。ヘリポートではやってきたメリッサが空中で揺れているヘリの足にぶら下がっているのを見、叫ぶ
「レイちゃん!!」
『…ッ、博士!』
亜夜はグッと体を引き上げ、デヴィッドのいる後部へと手を掛けた
「やめるんだ、オイカワくん逃げろ…!」
血を流しながら叫ぶデヴィッドに、亜夜は精一杯に手を伸ばす
『メリッサさんが……メリッサさんが待ってます!』
「………」
その名前に、デヴィッドの冷えて固まっていた心の底の奥がジワリと熱くなった
自分を、目標だと言ってくれた娘に、自分があんな顔をさせてしまうなんて───
犯した罪は消えない。それでも
デヴィットの目に光が戻ったその時
「確かにお前はヒーローだ。バカだけどな」
ウォルフラムが銃を亜夜に向ける。また撃たれてしまうのか
そう思っていた矢先、デヴィットが咄嗟に銃を蹴った。発射された弾は、フルガントレットに当たり弾かれる
だが、その勢いで亜夜は手を離してしまう
『(諦めるな!考えろ!どうする…!)』
落下していく亜夜にメリッサは叫んだ
再び上昇するヘリに向かい、離れていくのを止める様に亜夜は必死で手を伸ばす。落下する数秒の間、デヴィットを救けだす方法をひたすら考えながら亜夜はヘリポートに激突した
「レイちゃ…!!」
メリッサは慌てて駆け寄るが、言葉を失う──
「大人しく寝てろ」
脇腹に付いた紅の色に──
『くそ……っ!ちくしょう…!!』
遠ざかるヘリに向かってガバッと半身を起こし絶叫した
『返せッ!博士を返せっ!!』
理不尽に人を傷つける敵への怒りと、自分の力のなさへの怒りと悔しさがない交ぜになって体の中を嵐の様に吹き荒れる
『くそおぉお!!』
ボロボロになった心の傷から流れる血のように、亜夜の頬を涙が流れた
だがその時───