清田夢
□海南の清田
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「・・・・・・さっ!俺のデビュー戦まであとわずか!スーパールーキー信長様が神奈川を・・・日本を震撼させる日が来るぞ!」
急に立ち上がったノブは、手を上にあげながら、少し控えめな声で伸びをする。
「・・・あははっ!いつものノブだね。」
そう言って、私はノブを見上げた。
「名無しさんも見てろよ?俺の活躍を!」
また座りながら、ニコリと笑うノブ。
「・・・うん!」
と言って、私はノブに横から抱きついた。理由はわからないけど、
ノブにかける言葉がなかった私には、
こうすることしか出来なかったのかもしれない。
「・・・ノブ・・私は・・・見てるからね!知ってるからね!」
と肩の上に顎を乗せながら言って、ノブの頭を撫でた。
「・・・・・・・・・ぐすっ。」
「・・・え?あ??なんで泣いてる!?」
私はなぜか涙を流した。
ノブは私を離して、肩を掴んで顔を伺う。
───────
「・・・よくわかんないけど、ノブのプレッシャーとか、バスケのこととか。・・・ぐすっ。・・・でも、今日見たノブは一生懸命でカッコよかった。・・・疲れてたはずなのに、私と遊んでくれて・・・・・・。」
そう言って名無しさんは更に涙を流す。
「・・・そんなこと・・・」
「・・・違うの!ノブごめんね。いつも自分勝手に夜中まで・・・・・・。」
名無しさんは、俺のことばを遮って言った。
けど、違う。絶対に違う。
「・・・俺・・・バスケで大変なときも疲れてるときも・・・名無しさんと居ると落ち着くってゆーか、楽しいから一緒にに居る。・・・ただ、それだけだから。今まで通り・・・俺と遊んでよ。」
なんて言ったら良いかわからなくて、出てきたのは、こんな言葉だけ。
コクンと頷いた名無しさんは、俺に抱き着いてきた。
「・・・ノブ・・・ぐすっ。」
次の言葉を待ったけど出て来ない。
だから、俺はただただ名無しさんを強く抱き締めて、サラサラの髪の毛を掬いながら頭を撫でた。
「・・・名無しさん・・・ありがとう。」
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