清田夢

□海南の清田
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私は、もちろんノブの自転車の後ろに乗っている。


電車で2駅分の距離を、ノブは自転車で通っている。
というか、まぁどこに行くにもだいたい自転車。

私はいつも通りにノブにしがみつく。

「・・・久しぶりだね。」

「・・・そうだな。中学んときぶりか?」

「・・・そうだね。・・・ねぇ!ちょっと海見に行こうよ!」

「りょーかいっ!」

と言って、私たちは、中学生の頃よく行った海沿いへ行くことにした。



ーーーーー

「着いたー!海だねぇ!」

「あたりまえだ!ははっ。」

「そういえば、未来と武藤さんどうしたかな?」

「あー。武藤さん、やる気満々だったぞ?あれはまずいな。」

「そうなんだ。付き合うかな?」

「んー。どうかなー・・・お似合い・・・ではないなぁ。」

とかなんとか。話しをしながら座ってふたりで夕陽のキレイな海を眺めていた。



「なぁ、名無しさん。俺、本当は怖いんだ。」
ぽつんとノブが言った。どこか遠くを見ながら。
「なにが?」

「『常勝』」

「あー、さっきのかー。」

「・・・俺は確かにスーパールーキーだけど、『常勝』ってのは、先輩が作り上げてきた歴史だろ。
それを俺が壊しちまうんじゃねーかって・・・・・・」

ノブは珍しく真面目に、辛そうに話している。

「・・・だから練習してるんじゃないの?」

「まぁ、そうだけど・・・。」

「ノブのその身長で、大きな牧さん相手にだよ?吹っ飛ばされて怒られて。それでも何度も挑戦して。
それって簡単にできることじゃないんじゃない?」

私は、思ったことをそのままノブに伝えた。
ノブは真っ直ぐ前を見据えている。
「・・・うん。」

「ねぇ・・・ノブが練習するのは・・・不安だから?勝ちたいから?バスケが好きだから?」


「・・・・・・全部・・・かな?」

困ったように、ただ前を見ているノブ。

「・・・そこはバスケが好きだからって言うところでしょうが。」

茶かそうとするけど、ノブはいつもと違っていて。顔が歪んだままふっと笑うだけ。
不安な顔は変わらない。

その横顔は、今にも泣き出しそうで悲しそうで。

私はどうしたら良いのかわからない。



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