堕落した色松

□Triangle3
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茶の間には、皆に背を向け、部屋の隅で一松が横になり、離れた所で三人ちゃぶ台を囲んでいた。

「一松兄さん、大丈夫かな?今日、まだ猫に餌あげてないよね?僕あげてきた方が良いかな?」

一松の様子に、十四松が尋ねてくる。

「そうだな…、一松の大事な猫だからな。十四松、あげてきてくれる?」

「うん、分かった。ちょっと行ってくるね!」

台所に向かい、猫の餌を持つと、猫の居る裏路地へと出かけて行く。いつもは元気だけが取り柄の十四松でも、今回の件はショックだった。
皆が笑っている事が、十四松にとって一番嬉しい事。なのに、現実は違う。
手に持つ餌の袋を握りしめ、十四松は泣きそうなるのを我慢した。
通りを抜け、左手にある細道に入れば、いつも一松が餌をあげている裏路地。歩いて行くうちに体育座りで塞ぎ込む一人の人影が見えた。

「………カラ松、兄さん……?」

十四松の声に、カラ松の肩が微かに震える。

「カラ松兄さん!心配したんだよ!!」

カラ松の姿に、我慢していた涙が溢れ、十四松はカラ松に抱きついて泣いた。
そんな十四松に顔を上げ、頭を優しく撫でるカラ松。

「…何泣いてるんだ…brother…。」

「…だって…カラ松兄さん…だって……」

わんわん泣く十四松をカラ松はそっと抱きしめ、静かに涙を流した。












どの位、時が過ぎたのだろう。
お互い暫く泣いた後、二人で猫に餌をやる。美味しそうに食べる猫の頭を撫でていた。

「…カラ松兄さん、そろそろ帰ろ?」

「……………」

十四松の言葉に反応しないカラ松を心配し、顔を覗く。

「……帰ろ?ほかの皆も心配してるよ…?」

十四松の顔を見るなり、カラ松はニコリと笑みを返すだけ。十四松の頭を撫でると立ち上がり歩き出す。十四松も慌ててカラ松の後を追いかけた。

「…十四松…悪いんだが、一人で帰ってくれ…。まだあの家には帰りたくないんだ…」

「…でも、カラ松兄さんは何処行くの?行く所なんて無いでしょ…?僕も家以外行く所ないよ…?」

ここで離れてはいけないと、十四松は感じ、カラ松から離れようとしない。カラ松の腕を掴み、十四松はじっと見つめた。

「……分かった…。…帰ろう、十四松…」

カラ松の言葉に、パァ〜っと明るくなり、十四松は元気良く「帰ろう」と返した。
暫く二人で歌を歌い家路を歩く。色々話す十四松を、ただ笑って頷くカラ松。家が見え、十四松は走って玄関の戸を開け、「カラ松兄さんが帰って来たよ」と叫んだ。
その言葉に、出て来たのはチョロ松とトッティ。だが、カラ松の姿が見当たらない。
慌てて戻った十四松はカラ松の名を叫び続けた。



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