色松1

□駆け引き
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家に着き二階に上がれば、一松は相変わらず独りで外を眺めて居る。
いつもは直ぐに抱きつき一松の側に座るが、部屋の奥に座りファッション雑誌を広げた。
お互い話さず、静寂が辺りを包む。つい、雑誌に夢中になる俺は一松がこっちを見ている事に気付かなかった。何かを待ってる一松の姿に、グッと耐え浸すら雑誌に目を通す。
確実に構ってオーラを醸し出す一松に耐えかね、俺はトイレに行く振りをして部屋を出た。
(一松一松一まぁァァァァァァァつ!!そんなに見つめられたら………我慢出来ぃぃぃぃぃぃぃぃん!!!)
ぜぇはァぜぇはァと息を荒くし、壁にもたれかかり鼻を抑える。
そこにおそ松がパチンコから帰ってきた。
「おぅ、カラ松どしたの?」
「……い、いや何でも無い。パチンコどうだったんだぃ、brother。」
「いや〜、今日は絶好調でさ〜」
二人で話しながら部屋に戻ると、じ〜っと見てくる一松を見ない様、おそ松と会話を続ける。
「一松いたのか。ん?どうした?」
「…………何でも……無い。」
俺の態度に傷ついているのか、元気の無い一松に胸がキュンキュンする。今すぐ抱きしめたいが、ここは我慢。
構わず俺はおそ松と会話を続けた。
そして、居た堪れなくなったのか、一松が部屋から出て行ってしまった。
「……………」
「何、お前等、喧嘩したの?」
「……えっ、まぁ……そうだな……」
やはり見ていて可哀想過ぎる。胸がチクリと痛むのを感じ、やはり俺が悪かったと考えてしまう。
「もう、暗くなるのやめろよ!折角こっちは、勝ってルンルンなのに台無し!」
「仕方ないだろ!したくて喧嘩した訳ではないんだから!」
やり切れない思いはおそ松へと八つ当たり。
「何が原因よ?」
「……嫌。大丈夫だ……」
「大丈夫じゃないじゃん!空気悪かったよ!さっき!いつもは直ぐに、お前折れるのにどうしたよ?」
仕方なく、事の一部始終を説明する。始めは気持ち悪られたが、後半は真剣に聞いてくれる。やはり、兄弟は良いものだと実感してしまう。
「それで、お前冷たくしてんの!」
「声がデカい!一まぁつに聞かれたらどうするんだ!」
「あぁ、ごめん、ごめん。分かった。取り敢えず知らんフリしとくから、上手くやれ。」
「すまない…」
そんなこんなで、次々と兄弟達が家に帰り、最後に一松も帰ってきた。
みんなで夕飯を囲み、和気あいあいで食べる。が、他の兄弟達とは話すカラ松に対し、黙ってご飯を食べる一松。
そんな一松を気にかけながらも、敢えて声は掛けなかった。
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