色松1
□誰のせい?一松Ver.
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夕食を終え、いつもの様にお風呂争奪戦が始まった。
「よ〜し、今から順番決めな!」
「今日こそは絶対一番風呂頂きます!」
「ハッスルハッスル〜!お風呂ジャネイロ〜!頂きます!」
「何か今日は負けそうなんだよね〜、あれ?一松兄さんはやらないの?」
「…猫に餌あげに行くから後で良い…」
そんなこんなで、風呂の順番が決まり、ワイワイする兄弟を他所に一松は猫に餌やりにでかけた。
薄暗い裏路地、一松が来るなり猫達が表れてくる。
「待たせたね、お腹空いたろ。ゆっくり食べな。」
「「ニャー」」
一松のあげるご飯を美味しそうにほうばりながら猫達は餌を食べる。
一松にとって幸せなひととき。餌を食べる猫を撫でながら、猫に話しかけていた。
一通り餌を食べ終えた猫達は毛繕いを始め、各々寝床へと帰って行く。
「そろそろ、風呂も開く時間かな。」
そんな事を言いながら一松は家へと向かった。玄関を開け、部屋を覗けばトッティの姿がない。
「一松おかえり、今トッティが入ってるから入る支度しとけよ。」
「うん、ありがとう。」
そう言って部屋を後にし、トイレに向かった。用を足し、出てくれば、入れ替わりでトッティが脱衣所から出てきた。すぐさま脱衣所に入るなり、自分の着替えを取り出し、服を脱ぎ始める。
(今日は皆いっぱい食べてたな。明日は久々に猫缶にしよう。)
「「!!!!?」」
明日の餌を考えてたらいきなり脱衣所のドアが開き、カラ松がこっちを見て固まっている。慌てて服で前を隠すも後ろまでは隠せない。
未だにじっとこっちを見るカラ松に、心臓が有り得ないぐらい速い。
恥ずかしくて恥ずかしくて堪らない中、動かないカラ松に苛立ち、そこら辺にある物をわけも分からず投げつけた。
「…っの、クソ松!いつまで見てんだ!早く出てけ!」
「ちょちょっ、誤解なんだ!わざとじゃないんッグハッ!」
投げた洗濯籠が物の見事にカラ松の顔に当たり倒れてしまったが、そんなのは関係ない。もはや一刻も早くここから逃げ出したい。ドアを思い切り閉め、急いで風呂に入り、烏の行水の如く、そそくさと寝床に向かい布団を頭から被った。
(有り得ない有り得ない有り得ない!
クソ松に裸見られた!?もう顔合わせられない!どうしようどうしよう!)
布団の中で顔を真っ赤にし、収まらない心臓の鼓動が有り得ないぐらいに耳障りに感じていた。
そんなこんなで、眠れぬまま襖が開きカラ松が布団に入って来た。
「…一松、まだ起きてるのか?」
「…………」
返事なんて出来る訳もなく、心臓の音を聞かれるのではないかと心配しながら、一松はただただじっとしている。
「…その、さっきは悪かったな…わざとじゃないんだ、その…」
「……もう、いい…」
「…そっか、なら良いんだけど。おやすみ。」
「…………」
隣でカラ松が寝てると思うと、一松はますますねられなかった。
柔らかい日差し、優しい風。
優しく頭を撫でる手が気持ち良くて、ふと目を覚ますと、そこにはこちらを驚いたような顔で見るカラ松の顔。一気に顔が火照り、思わずカラ松を押しのけると布団から飛び出した。辺りには皆居らず、一松は動揺が隠せない。
「みみみみ皆は!!??」
「既に起きていたみたいで、下じゃないか?」
「…………」
そう聞くなり、カラ松と二人きりの部屋からそそくさと逃げ出し、下の部屋に入るなり、おそ松の後ろに隠れる様に座った。
「一松おはよう。」
「…………」
(ああああんなに近くで顔みたら、僕死んじゃう…!!静まれ心臓!!おそ松兄さんにもバレちゃうよ!)
真っ赤な顔で荒い息遣いの一松におそ松は顔を覗き込んだ。
「一松大丈夫か?顔赤いけど熱あるのか?」
「だだだ大丈夫…何でも無いから…!」
あきらかに様子のおかしい一松に一同顔を見合わせた。
そのうちカラ松も降りてくるなり、皆に様子が変だと疑われる。
「あのさ、カラ松と一松何かあったの?」
おそ松の言葉に一松の身体が跳ね、何かを言おうとするカラ松の言葉を遮るように、否定した。
そのうち皆でパチンコに行く話になっていたが、今の一松にはそれどころではない。皆が出掛けようとしてる事さえも気付かないままだ。
「一松はどうする?」
チョロ松の言葉に一松は我に返り、咄嗟に「行く」と言いかけて、割って入ったのはカラ松の言葉。
「一松と話があるから皆で行ってきてくれ。」
「分かった。」
そう言って皆は部屋を出て行ってしまった。
今はカラ松と二人きりになりたくない一松は顔を伏せうずくまってしまう。そんな一松の肩にカラ松の手が乗った。
「…一松…昨日の事怒ってるなら本当に悪かった。」
「…………」
「昨日のは誰にも言って欲しくないなら誰にも言わない。ただ、あの件で避けないで欲しい。嫌いなら嫌いで仕方ないと思ってる…嫌われる事をしてしまったのは俺だから…でも、
一松に避けられると俺はどうしていいか分からない…他の兄弟は仕方ないと思ってる。でも…一松…お前だけには…」
カラ松の涙汲む声に一松は顔を上げた。