堕落した色松
□Triangle5
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西の空が朱くそまるころ、河原で店を広げる一台の屋台。
美味しそうなおでんの匂いを立ち登らせている。
おぼつかないその足取りで近づく一人の男。つまづいては、転び、また立ち上がり歩き出す。
家を出てから二日目の夜。
朝から飲んでいたのか、酒の匂いを撒き散らしながら、おでん屋のイスに座った。
「っらっしゃい!って、カラ松お前かぃ。なんだぁもうそんなに酔っ払ってんのかぃ」
「………ちり太……ヒールくれ……ヒックっ……」
ぐでぐでのカラ松の前に差し出されたのは一杯の水。
「……みるらない!!」
「とりあえず、先にそれ飲んどけってんだい!!」
チビ太に言われ、渋々水を飲む。
そのうち、ビールとチビ太にみつくろれた幾つかのおでんが出てきた。
ビールを注ぎ、おでんに箸をつける。
静かに食べ始めるカラ松に、チビ太は黙って新聞を読み始めた。
味の染みた大根を口に含むと、噛まなくても崩れ、口の中におでんの出汁が広がる。
その美味しいおでんに、カラ松の目から涙が溢れて止まらない。
黙々と食べ、あっという間に皿が空になると、チビ太は黙っておかわりを差し出した。
「…………………」
どんなに酒を飲んでも、一松のあの怯えた顔が頭から離れない。幾ら感情的になってしまったとしても…と、後悔の念が押し寄せる。
正直、許せるか許せないかと言えば、許せる自信が無い。
ビールを口に運ばながら、ぼんやりとそんな事を考えているうちに、凄く眠たくなって来る。丸二日寝ていないせいだろう。
そのまま、カラ松は倒れるように意識を無くしていった━━━━━
「今日は久しぶりに、三人で出掛けて楽しかったね!」
「そうだね!なんならこのまま飲み行こう!!」
「……何か、チビ太のおでんが食べたい…」
「んじゃ、チビ太んとこで決まりだね!」
あれから三人は、朝食を取り終えると、猫に餌やりをしたり、ゲーセンに行ったり、トッティがバイトしていたスタバァに行こうとするのを、必死に止めるトッティをからかったりしながら街を練り歩き、気晴らしをした。
ワイワイ騒ぎながら、河原に向かう。
遠くから見える屋台には、一人先客が居たが、三人は気にもせず、おでん屋に向かった。