色松1
□夏色模様2
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西の空がすっかり朱色に染まり、気温もだいぶ下がり涼しい風が流れ込む部屋に、一人窓越しで夕日を眺めている一松が居た。
あれからカラ松は何処かに出かけて行き、帰って来ない。
窓から流れる夕飯の支度の匂いに、今日はカレーなんだと知る。
遠くの方から賑やかな声、兄弟達が帰ってくる。何だか急に胸が苦しくなり、一松は顔を伏せた。
暫くして、その賑やかな声は階段を上がり部屋の中に入って来た。
「ただいま――!!一松兄さん!!」
元気に十四松が俯く一松に抱きつき、顔を覗こうとするのを、些細な抵抗で阻止する。
「…おかえり。」
変に勘ぐられないよう、少し顔を上げ、一松は言った。
「ただいま一松。なんだカラ松まだ帰って来てないのか?」
『カラ松』と言う単語に、嫌でも身体が反応する。
あれは何だったのか…
どうゆう意味だったのか…
考えればキリが無い。
「…………プール、どうだった?」
「すげー楽しかった!スライダー5回もやっちゃって!チョロ松なんか尻に穴空いちゃってさ!」
「五月蝿い!兄さんが無理やり誘うからだろ!何で皆はあかないんだよ!!」
「チョロ松は要領が悪いからなぁ。仕方ないんじゃない?」
「仕方ないで済む問題かよ!要領が悪いって何!?そんなに不器用!?」
「だって、にゃーちゃんだろ?」
「今にゃーちゃん、関係ないじゃん!!!」
いつもと変わらない兄弟のやり取り。少しは安心出来る。
そう、いつも通り…いつも通りに、何も無かった様に接すれば良いと、一松は自分に言い聞かせた。
そしたらカラ松もいつも通りに接してくれると…
そのうち、玄関の戸が開く音が聞こえ「ただいま」と、カラ松の声が聞こえた。
一松の心臓が一段と跳ねる。妙に鮮明に聞こえるカラ松の足音。一歩二歩と部屋に近づくそれは、部屋の前でとまり、そして部屋の戸が開いた。
「おっ、カラ松おかえり。どこ行ってたんだよ?」
「いや、何、駅前に買い物に付き合わされたんだよ!全く、my friendは人使いが荒くて困るよ。まぁ、頼りになるからな!俺は。」
「それって、どうせ良いように使われてるんだろ?」
おそ松の何気無い言葉が一松の頭にこびり付く。さっきから一松を見ようとしないカラ松に気付いていたからだ。