メ ン バ ー 内 恋 愛 し ち ゃ い ま し た 。

□Face to Face
1ページ/1ページ


電話じゃ伝わらないことだって、

LINEじゃ伝わらないことだって、

目と目を合わせたら伝わるんだね。





俺と健ちゃんが付き合ったのは、今から3か月も前のこと。

告白したのは、俺だった。

自分でもわかんないほど、気がつけば目で健ちゃんを追うようになっていって。



…このこと、メンバーには言ってない。

グループにとって今が一番大事な時期だということは充分わかっている。

二人であれこれ考えたがゆえの結果だった。

だから寂しいけど、メンバーといるときの健ちゃんは敬語だし、もちろんキスだってしてくれない。

………最後にキスをしたのは、いつだっただろうか。





最近、個々の仕事が増えてきて、ありがたいことに俺たちは忙しい日々を送っている。

もちろんそれは、ありがたいこと。

だけどそうなると、自然と健ちゃんに会える時間は減ってしまうわけで。

やっと会えたと思ってもメンバーがいて、ここ最近はまともに手を繋いだり、キスをしたり、そういうことが出来ない状況ってわけ。

だからこうして、優しい健ちゃんは毎日電話をくれるんだ。





今日の東京はいつになく冷え込んだ。

仕事終わりは、健ちゃんからもらったマフラーに顔をうずめて夜道を歩く。

こんな日はどうしようもなく人肌が恋しい。

…ああ、寂しい。



家に帰っても、お帰りを言ってくれる人なんていない。

寂しさに潰される前に寝てしまおうか、なんて考えていたら、着信を知らせる音楽。

相手はもちろん、健ちゃんからで。

『もしもし、直人さん?』

そんな健ちゃんの関西訛りな声を聞くだけで、思わず鼻の奥がツンと痛くなる。

「健ちゃ…ん……」

『なに、いきなり泣かんとってや笑』



“会いたい”

そう伝えたいのに、口に出せない。

忙しい健ちゃんを困らせてしまうんじゃないかって。

そんなことを考えたら言えなくなっちゃって。

代わりに頬を伝う涙が止まらない。



『………俺な、何も言わんでもわかるから。』

「なにが?」

『………直ちゃんが今、何を考えてるんかなーって。』

「直ちゃんって…」

『たまにはええやろ?笑』

ふふ、っと笑った健ちゃん。

今どんな顔で、笑っているんだろう。

『何も考えなくていいから、もっと素直になってええから。

俺は迷惑とか思わへんし、そんなん。

だから今、直ちゃんが思ってること、ちゃんと言葉にしてほしい。』



ああ、やっぱり敵わないや。

だってほら、こんなにも俺の心を溶かしてくれるのは健ちゃんしかいないもん。

その優しさも強さも、何もかもが愛しすぎて苦しくて、涙がこぼれる。

「………会い…たい…っ健、ちゃんに…会いたいよぉっ……!」



ずっと胸でつっかえてた言葉、想いがどんどん溢れ出してく。

どんなに嗚咽混じりで聞きにくくても、それでも健ちゃんはただ笑って聞いてくれる。

すると、ふいにガチャ、っと家の鍵が開く音。

泣いたせいで少しだるい体を起こし、玄関に向かった。



____お待たせ。





そこにいたのは、俺が今一番会いたかった人だった。

「なんで………」

訳もわからず立ち尽くす俺を、健ちゃんはこれでもかってくらい、強く強く抱きしめた。

健ちゃんのジャケットは外の空気のせいかひんやりと冷えている。

それでも健ちゃんに包まれるだけで、何とも言えない温かさを感じた。

「直人さんが、可愛いこと言うから、健ちゃん来てもうたわ。」

「健ちゃん………!」

「ずっと、会いたかった。」

「………俺も…っ!」





今日の東京は冷え込んだ。

はぁ、と吐いた息が白く染まるくらいに。

それでもこの夜は、温かかった。

ちゅっ、と触れた唇が、熱を帯びた。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ