文久三年

□屯所
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着いたのは、立派なお宅。

地の農家を思わせる大きなお屋敷だ。

そういえば、最近、町家の再利用が取りざたされている。

ここも、そんな感じでコスプレイヤーさんたちに貸し出されているのだろう。

(ここで電話かしてもらお)

もう一度iPhoneの【圏外】という文字を確かめて、あたしはそう思った。


玄関の引戸の前で、【土方歳三】は振り返って、あたしに着せた羽織の襟をきつく合わせる。

「ちゃんと押さえてろ」

ドスのきいた声で言って、敷居を跨いだ。

【土方歳三】の背に見え隠れするのは、
開け放たれた続きの間の奥の方に胡坐をかいて輪になり何か話している数人の若い男性たち。

【土方歳三】の帰還に気付いて、今まで騒がしかった声がピタリと止んだ。

中にいたのは、【沖田総司】を入れて五人。

「──こ、こんばんは」

思わず小声になってしまうほど、鋭い視線が突き刺さる。

やっぱり、のこのこここまでついて来たのは軽率だったかもしれない──そう後悔し始めた。

「今残ってるのは、これだけか?」

【土方歳三】の問いかけに、全員がうなずいた。

「芹沢達は?」

「さあ?夕刻から見ねえな」

がたいのいい強面の男性が応えた。

「そうか、」

言って【土方歳三】は中に上がり、「上がれ」と手招きした。


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