文久三年
□夜道は暗いもの
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「さ、四条まで出たぞ」
【ポニーテール】に言われて、あたしはきょとんとした。
「──、え、ここ?」
ぐるりと見回して、違和感を覚えた。
しかし、視界の中にあるのは長刀鉾だ。
(てことは、大丸らへんやんな………)
大丸百貨店京都店があってしかるべきなのに、見渡すかぎり、そのような物はなく、あるのは民家のような建物ばかり。
(だいぶ、大宮寄りなんかな………?)
長刀鉾のように見えるあれも、きっと違う鉾なんだろう。
「──あの、四条烏丸って、どっちでしょう?」
地元民のくせに格好悪いと思いつつ訊くと、意外なことに彼らは右手の方を指差した。
「ちなみに三条通は……」
今度は背後を指す。
(──!)
ということは、あたしはまだ四条烏丸よりも東にいることになる。
(なんか、おかしい………)
(とりあえず、陽菜らに連絡しよ)
LINEを送ろうとするが、
(あれ?)
(なんで、?)
(送れへんやん)
じゃあ、電話は──?
だが、
「へ? なんでなん?!」
メール、SNS、考え付くあらゆる手段を講じてみるが無駄だった。
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