お姉ちゃんシリーズ
□カランコエは幸福を告げる
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突然、妹が聞いてきた質問に、飲んでいたお茶をこぼしそうになった。
ぐずぐずと口を濁していたお姉ちゃんに、いのは更に追い討ちをかける。
「じゃあ…好きな人は?」
顔に熱が集まって、湯気が出るんじゃないかと思うほどに真っ赤になっているお姉ちゃんは、その妹の質問にジワリと目線を逸らしす。
「なによ!いるんじゃない!私聞いてないわよ!」
流石血を分けた妹だとお姉ちゃんは思った。別に隠していた訳では無いけれど、何だかバツが悪い。
顔に集まる熱を少し冷たい己の手のひらで逃しながら、再びいのに目を向ける。
『あ、あー、いの。べ、別に好きとかそういう訳ではないの。』
「じゃあ、今の不自然な目の逸らし方は何よ?」
さっきまで漂っていたいつものほんわかした時間は何処へ行ってしまったのか。いのは、追及の手を緩めなかった。
「誰なの?私も知ってる人?!」
女の子の恋バナに対する探究心はすごい。もちろん、お姉ちゃんだって人の話を聞くときにはその特性が顔を出すが、自分の事となると話は別なのだ。
秘密主義だとかそういうものじゃなく、ただ単に恥ずかしい。それこそ、穴があったら入りたいくらいには…。
『ん…と…。たたた多分知ってる?』
しかし、こうなったいのはしっかり対応しないと絶対に納得しないのもわかっているため、お姉ちゃんはポツリポツリと話し始めた。
『あー、あの…よくお店に…来てくれる人で…。でも、ちょっと素敵だな、とかそれくらいだよ?すすす好きとか…そういうのは全然まだ無いからねっ!』
恥ずかしさで語尾に無駄に力が入ってしまったが、仕方ない。
妹を見れば、ニヤニヤと至極楽しそうな顔をしている。
「へー。ふーん。ほー。」
意味のない文字を嬉しそうに口から出す妹はとても可愛らしいが、お姉ちゃんは自分の顔が引きつるのを感じた。
「で、だぁれかしら〜?」
思いつく人を次々と上げていく妹を観念した思いで見つめる。
「ん〜、シカマルとチョウジはないわね。ガキは姉さんには似合わないし…。アスマ先生?いや、紅先生にお花も買わなさそうだし…。」
向かいでアレも違う、これも違うと考え始めたいのには申し訳ないが、そろそろ時間が迫ってきている。
『あの…いの?そろそろ準備、しなくていいの?』
「え?うっそ?!もうこんな時間⁈‼」
慌ててご飯を口に収めていくいのに、ほっと一息つく。
しかし、お姉ちゃんはお姉ちゃんで、店を開ける時間が迫っていた。
あっという間に食べ終わり、バタバタと準備を始めたいのを見ながら食器の後片付けを始める。
今日も、あの人は来るのだろうか。いのに突かれたせいで、無駄に意識し始めた自分はいつも通りに出来るのだろうか。
スポンジに泡を纏わせながら、お姉ちゃんはまた頬に熱が集まるのを感じた。