お姉ちゃんシリーズ

□カランコエは幸福を告げる
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『いの、いの。起きて。』

朝食の準備もしっかりと整った、朝6時少し前。
いのは優しく頬に触れる手で目を覚ました。
もうちょっと寝ていたいのが本音だが、心地よく響く声に眠い目を開ける。ぼやける視界には、大好きな姉の姿。

『おはよ、いの。朝ごはん出来てるよ。』

「んぅ〜…姉さん、おはよ…」

寝起きの舌ったらずな挨拶に優しく微笑む姉に手を伸ばす。

『ほら、早く顔洗ってらっしゃい。』

クスクス笑いながら手を引かれて起き上がる。小さい頃から、いのは姉に手を引かれて寝床を後にするのだ。ずっとそうだからか、最早癖である。

立ち上がると、手を離して一人寝起きの気だるさと小さな争いをしながら洗面所へと向かう。

顔を洗って少ししゃっきりした頭で、台所へと向かえば味噌のいい香りにいののお腹がクゥと可愛らしい声を上げた。

『ほら、温かいお茶飲んで。ゆっくり食べなさいね。』

その音が聞こえたのか、お姉ちゃんはまたクスクスと笑い声を漏らした。
何の変哲も無いことだけれど、私愛されてるなぁといのは思う。

もちろん、両親だってたくさん愛情を注いでくれているけど、姉の愛情はとっても柔らかい。いのはいつも、フカフカの布団に包まれているような気持ちになるのだ。
こんなに優しくて、器量もいい姉の妹として生まれるなんて私ってば恵まれてる。
幸せな気分に包まれながら、いのはお箸を手に取った。

「はーい。いただきまーす。」

『どうぞ召し上がれ。』

今日の朝食メニューは、鳥の蒸し物に魚の煮凝りをタレとしてかけたものをメインに、温野菜と味噌汁、出汁巻き卵に白ご飯だ。言われた通り、温かい御茶で口を潤してから姉の料理に舌鼓を打つ。

妹の自分が言うのもなんだが、姉は絶対にいいお嫁さんになるだろう。料理の腕も最高だ。

「姉さん、恋人作らないの?」

美味しいご飯を口に運びつつ、向かい合って座っている姉に聞いてみる。
こんなに素敵な人を放っておくなんて、世の中の男共は何を考えているのか?

『ぇ?!なななに言ってるの、いの?!こここ恋人なんてそんな…!』

…放っておいている訳ではなく、このウブさが男を遠ざけているのかもしれない。
そういえば、昔からこうだったなとハタと思う。人の恋バナは結構好きなくせに、自分の事となるとこうだ。

私が、姉の積極性を全部吸い取っちゃってるんじゃないかと時々不安になるいのであった。
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