お姉ちゃんシリーズ

□お色気の術!!!
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今日も今日とて、我が弟はイタズラに勤しんでいるようだ。
今日は歴代火影様達の顔を模った顔岩におバカな落書きをしたらしい。今しがた近所のおばさんにそう言われた。

「お姉ちゃんちゃんも大変ねー」

里の人の中にはナルトに悪感情しか持たない者が多いが、このおばさんはきちんとナルトの人となりを見てくれている希少な存在だ。

『あー…いつもすみません』

ナルトが疎まれる理由は分かっている。でも、たまにあの理由だけじゃなくイタズラのし過ぎでそうなっているんじゃないかと思うこともある。

もちろん、お姉ちゃんだってあまりに酷い時や、人を傷つけるようなイタズラをした時には叱りつけている。
母が生きていたらもっとヒドい怒り方をしていただろう。もとより、両親が生きていればここまでのイタズラっ子には育たなかったかもしれない。

お姉ちゃんは、小さなため息を溢すと確実に任されるだろう後処理へと向かった。目的地はもちろん火影岩。




しばらく行くと、どうやらナルトのクラスの担任であるイルカの叫び声が聞こえた。

「何やってんだー!授業中だぞ!」

よく響く声にお姉ちゃんは自然と急ぎ足になる。イルカはたまにナルトが連れて帰ってくるから良く知っている。仲良くなるまでには色々とあったらしいが、今はナルトが自分以外に唯一信頼し甘えられる存在だ。

『火影様!イルカ先生!いつもすみません!』

早く降りろと叫ぶイルカの側にたどり着くとお姉ちゃんは三代目に頭を下げた後に、イルカにもペコリと頭を下げた。

「お姉ちゃんか。お前にも迷惑かけるのぉ」

「来たか、お姉ちゃん!お前のせいじゃないだろう。こりゃナルトの問題だ」

二人にそう声をかけられても、姉として、保護者としての責務を果たせていないのは自分だ。
ナルトにはもう少し厳しくすべきなのはわかっているが、どうしても血を分けた可愛い弟には甘くなってしまう。しかも、今やナルトはお姉ちゃんの唯一の家族だ。
親を見た事もない弟…本音を言えばベタベタに甘やかしてあげたい。

『もう少し厳しく言えるように頑張りますね…』

シュンとしてしまったお姉ちゃんに優しい笑顔を向ける火影とイルカ。
だが、イルカはキッと表情を変えてナルトを怒鳴りつけた。

「ナルト!お姉ちゃんが心配してるぞー!早く降りろ!!」

「は?うわ、ヤベーってばよ!」

ナルトはお姉ちゃんの名前を出されると弱い。大好きな姉が来ていると聞いて、慌てて顔岩から三人の側までやって来た。

『コラ!ナルト!何やってんの!』

今回は迷惑行為の規模が大きすぎたのか、お姉ちゃんの顔が険しい。
ナルトは少しだけ焦る。

「す、すぐに綺麗にするってばよ!」

怒ったお姉ちゃんは結構怖い。さっさと綺麗にして綺麗な姉の笑顔を取り戻さなくてはと掃除用具を取りに向かおうとするナルト。

「ぐはっ!」

しかし、襟首をイルカに掴まれてしまいそれは叶わなかった。

「何するんだってばよ!イルカ先生!」

プクっと頬を膨らませてイルカを見上げれば、その額には青筋が浮いていた。

「何するんだってばよ!じゃないだろう!ナルト、俺は授業抜けて来てんだ!さっさと戻るぞ!」

青筋を浮かべたまま、ニッコリと笑顔で怒鳴るイルカが恐ろしくナルトは固まった。

『帰ったらお説教よ、ナルト。掃除は私がやっとくから、ちゃんと授業受けてらっしゃい』

ズルズルとイルカに引き摺られながら、此方へ助けを求めて手を伸ばす弟にピシャリと言う。
ナルトはガーン‼という効果音が聞こえて来そうな顔でアカデミーへと引っ張られて行った。

『…ふぅ…火影様、本当にすみません。すぐに綺麗にしますから』

ナルトを見送ったお姉ちゃんは、改めて三代目に頭を下げた。

「かまわんよ。しかし、ナルトも今回は随分と張り切ったようじゃな」

三代目が顔岩を見上げるので、それに習ってお姉ちゃんもそちらへ顔を向けた。
…改めて見ると、確かにえらく広範囲に渡ってラクガキをしたものだ。初代から四代目…自分たちの父の顔までビッシリと覆ったペンキにため息が出る。

『…四代目の顔…ヒドイ…』

そうは思うものの、父の顔を見ているとどうにも笑いが込み上げてきた。

肩を震わせ始めたお姉ちゃんに三代目が首を傾げる。

「どうしたんじゃ?」

『…いえ、両親が生きていたら母が爆笑したろうなと思いまして…ふふっ』

「クシナか…そうじゃな。ミナトはきっと困った顔で笑っておるのぉ」
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