お姉ちゃんシリーズ

□僕の姉さんは団子の虜
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とある朝



「姉さん!起きてください!!」

『ん〜〜、もうちょっと〜』

ロック家の朝は毎日こうだ。
姉のお姉ちゃんの布団を引っぺがす弟のリー。
二人とも飽きもせず毎日このやり取りを繰り返している。

なまじ声がデカいので、少々近所迷惑だが、二人の人望からか未だ文句を言われたことはない。

「姉さん!起きないと朝食抜きの刑です!」

『………朝ごはん何…?』

布団にしがみついたまま、ジト目で見上げてくるお姉ちゃん。
リーは勝ち誇った顔で朝食のメニューを告げた。

「ふふ…!今日の朝ごはんは、姉さんの大好物、僕特製の中華粥です!」

どうだ、食べたいだろう!ドドンと音が聞こえそうなドヤ顔でリーが言い放った。

『っ!たっ、食べるっっ!!』

途端に剥がされまいと抱き込んでいた布団を放すお姉ちゃん。
布団を掴みあっていた形のリーは勢いよく後ろへすっ転んだ。

「い、痛いです、姉さん…。」

『まだまだ修行が足らんぞ、リー!!』

「はいっ!ガイ先生っ!!…って、ガイ先生の真似はやめて下さい!」

『…つい出来心で…』

「全く、姉さんはいつまで経っても子供みたいなんですから…」

ノリツッコミへの恥ずかしさからか、少しだけ赤く染まった愛弟の姿にえらくスッキリしたお姉ちゃんは、朝食をせがむ。

『ねー、リー!早く食べよ!』

「ちょ、ちょっと待ってください!まずは顔でも洗ってきたらどうです?!姉さんだって一応女性でしょう!」

むくりと起き上がったリーがお姉ちゃんを呼び止める。しかし、最後の一言が引っかかった。
ニッコリと笑顔でリーを振り返る。

『…一応ってなぁにかなー?』

ゴゴゴ…という音が聞こえそうな程の威圧感に、リーはその場で小さくなった。

「…すみません。」

『いい加減に女の子の扱いを覚えないとテンテンに愛想尽かされちゃうよ!』

そそくさと謝れば、何とも見当違いな姉の言葉が返ってきた。
姉の口は軽い。出発までには、何とかしなければ噂が里中に広がってしまうだろう。
今のうちに何とかしなくてはと思ったリーは勢い込んでニヤニヤと笑うお姉ちゃんに対抗した。

「なっ?!テンテンは関係ないでしょう?!」

『おや?違うの?』

「違いますっ!だいたい僕の好きな人はサクラさんですし!」

フンっとそっぽを向いて言えば、お姉ちゃんにため息をつかれた。

『サクラは良い加減諦めなさいって…。お姉ちゃんはテンテン、良いと思うけどなー』

甘味屋で会う内に仲良くなった弟の想い人を思い浮かべる。
昔からサスケサスケうるさい子だった。アレは一生変わらないだろう。サクラは一途な子だ。確かにいい子ではあるけれど、付け入るスキは無さそうだ。

「僕はサクラさんを守るんです!だいたい、テンテンは守る必要が無いじゃないですか。」

『いや、女の子は守られるだけじゃ嫌でしょうよ。』

何をいっているのか、この愚弟。
思わずお姉ちゃんはそう思った。
いつものまん丸お目目をきょとりと更に丸めて不思議そうな顔をするリーにシッカリとくノ一の心を叩き込まなくては!
謎の使命感に駆られて声を荒げた。

『甘い!甘いわよ、リー!』

「???」

『いいこと?私達は忍びなの。くノ一にとって、最高の相手は最高の相棒なのよ!守られるんじゃなくて、背中を任せられる、つまりお互いに守り合える相手とこそ素敵な関係を築けるの!』

息を切らしてそう言い切った。里の生活を一生懸命支えてくれている一般女性の皆様にはリーの意見でバッチリと当てはまるだろうが、くノ一は違う。
ただ守られるなんて、認められてないという事実を突きつけられているだけに過ぎない。そんな相手と添い遂げたいなどと誰も思わないだろう。
フフンと今度はこちらが勝ち誇る。
リーは何か思うところがあったのか、難しい顔で考え込んでいる。と、しばしの間が過ぎ去った後リーはおもむろに口を開いた。

「…姉さんにとってのゲンマさん…ですか。」

『そうそう、私とゲンマみたいな…って何よ、それ?』

女心がわかったかとばかりに勝ち誇った思いでリーの言葉を聞いていたお姉ちゃんは、何故だか出てきた名前に首をかしげた。

「姉さん、付き合い始めたんでしょう?最近里の中で噂になってますよ。」

『は?何で?』

同僚の名前に連なる自分の名前に違和感を感じる。何処から出た噂なのか…。
確かに、特上同士よく話すし仲が良いと思う。けど、それはアンコやライドウにだって言える事だろう。

「間違っている訳がありません。先日、サクラさんが言ってましたから!」

…サクラに言われたら白い物でも黒と言うんじゃなかろうか。恋は盲目とはよく言ったものだ。

さてしかし、火の無いところに煙は立たない。
何かあっただろうか?
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