お姉ちゃんシリーズ

□カランコエは幸福を告げる
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山中お姉ちゃんの朝は早い。

まだ里が暗い時間に布団からのっそりと起き上がったお姉ちゃんは、くわぁと一つ欠伸を零す。

『ふぅ…お店の準備しなきゃ。』

お姉ちゃんは生理的に滲んだ目尻をコシコシと擦ると、ぼんやりする頭で部屋の電気を着けた。
実家の家業である花屋を継いだのは、長女のお姉ちゃんである。5歳下の妹いのは可愛い見た目に反して忍びの道を順調に歩んでいた。

『今日は確か、8時から任務だって言ってたわね。』

明るくなった部屋の中で、お姉ちゃんはボソリと呟いた。
毎朝、いのを起こすのも幼い頃から彼女の仕事だ。
いのもすっかり女の子になって、結構準備には時間がかかるので出発の2時間前には起こすようにしている。アカデミーで憧れていたサスケ君とやらが里抜けしてからというもの、妹の恋の話は聞こえないが、女たるもの自分を磨くのを忘れてはいけない。とはいえ、寝起きも十分に愛くるしい妹を思い自然と口角が上がる。

『さて、いのを起こす前に自分の準備だわ。』

そう言うと、お姉ちゃんは手早く身支度を始めた。

最後の白粉をはたき終わると、まだ薄暗い外へと向かう。店の方へ向かうと、花の香りが溢れていた。

『今日の仕入れは…んー、あんまり減ってないっか。』

つぶやきながら店内をグルリと見回す。毎日の仕入れは電話で業者に頼むのだが、今日は然程昨日と変わらない。

『まぁ、ちょっとしたリースでも作ろうかしら。』

使えそうな花を選別していくお姉ちゃん。毎日のこととはいえ、無い知恵を振り絞ってお店の売り上げをいかに増やすか考えるのは骨が折れた。最近は、試しにと作ってみたリースが意外と好評なのだ。

粗方リースの材料となる花を集めれば、さっきまでは花で埋め尽くされていた店内にチラホラとスキマが出来た。

『うん。今日はちょっと大振りの花でも入れてもらおう。コウテイダリアとか素敵だものね。』

うんうんと頷きながら独り言を言っているうちに空が白み始めてきた。そろそろ、朝食の準備を始めなくては。

まだまだお手軽任務らしいが、忍びは忍び。成長期でもあるし、しっかりとした朝食を取らせておきたい。任務中にお腹が鳴るなんて、いくら一緒にいるのがいつものメンバーだろうと恥ずかしいだろう。

ちなみに、両親は仲良く長期任務中である。大して危険な任務じゃないからと、二人して旅行気分で出掛けて行った両親を思い出す。

家族に思いを馳せつつ、お姉ちゃんは家の方へとあしを進めた。
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