恋するパステル

□神様にお願い
1ページ/8ページ

「なぁ、フレッチャーどこか出掛けないか? 」

 普通の恋人同士のようにデートしたい。

 それがラッセルのここ最近の悩みだ。

 でも弟のフレッチャーは、そう言った気持ちは特にないらしい。
 何処にいたって一緒ってやつか。

 …まあ、そうなんだけどさ。

 俺たちは兄弟で、いくら恋人同士のフリしたって、世間に公表出来る恋人にはなれない。結婚も出来るわけじゃない。けれど、形だけでもそうでありたい。と言うか、デートしたい。

 お兄さまは可愛い弟に夢中なのだ。

「良いけど、何処行くの?」

「まぁ待て。明日待ち合わせしよう」




「兄さん、こっち!」

 PM:2時。

 二人は噴水の前で待ち合わせをしていた。

 人混みの中、ラッセルを見つけて嬉しそうに手を振るフレッチャーに、思わずこちらも微笑む。

 見ると、服も少々洒落てるようだ。

 お前も楽しみにしてたんじゃないか。

「ほら」

 花束を渡すとフレッチャーは目をぱちくりとさせた。

「兄さんコレは?」

「受け取れよ」

「ありがとう」

 あ…。

 笑顔が。

 ひっそりと咲く、一輪の花のように、でも一度見たら誰もが魅せられてしまうー、そんな素敵な笑顔で、フレッチャーは笑った。

 それだけで、ラッセルの心臓は高鳴る。

「腕からめてもいいぞ」

 さり気なく言ってみたのだが。

「うーん。兄弟でそれはちょっとなぁ」

「…だよな。俺もそう思ってた」

 拒否された事に動揺して、フレッチャーから距離を取るラッセル。

 好きだ、愛してる。

 だから俺を、もっと好きになって欲しい。

 本当はそう言いたいのに…。

 …いい加減大人になりたい。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ