恋するパステル
□神様にお願い
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「なぁ、フレッチャーどこか出掛けないか? 」
普通の恋人同士のようにデートしたい。
それがラッセルのここ最近の悩みだ。
でも弟のフレッチャーは、そう言った気持ちは特にないらしい。
何処にいたって一緒ってやつか。
…まあ、そうなんだけどさ。
俺たちは兄弟で、いくら恋人同士のフリしたって、世間に公表出来る恋人にはなれない。結婚も出来るわけじゃない。けれど、形だけでもそうでありたい。と言うか、デートしたい。
お兄さまは可愛い弟に夢中なのだ。
「良いけど、何処行くの?」
「まぁ待て。明日待ち合わせしよう」
「兄さん、こっち!」
PM:2時。
二人は噴水の前で待ち合わせをしていた。
人混みの中、ラッセルを見つけて嬉しそうに手を振るフレッチャーに、思わずこちらも微笑む。
見ると、服も少々洒落てるようだ。
お前も楽しみにしてたんじゃないか。
「ほら」
花束を渡すとフレッチャーは目をぱちくりとさせた。
「兄さんコレは?」
「受け取れよ」
「ありがとう」
あ…。
笑顔が。
ひっそりと咲く、一輪の花のように、でも一度見たら誰もが魅せられてしまうー、そんな素敵な笑顔で、フレッチャーは笑った。
それだけで、ラッセルの心臓は高鳴る。
「腕からめてもいいぞ」
さり気なく言ってみたのだが。
「うーん。兄弟でそれはちょっとなぁ」
「…だよな。俺もそう思ってた」
拒否された事に動揺して、フレッチャーから距離を取るラッセル。
好きだ、愛してる。
だから俺を、もっと好きになって欲しい。
本当はそう言いたいのに…。
…いい加減大人になりたい。