僕のくれよん

□頑張れ、ウンリィ
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「どーしてここまで壊せるの!?」

「直せる、ウィンリィ?」

 アルが心配そうに手元を覗き込んできたので。

「あたしを誰だと思ってるの?」

 不敵に笑ってみせた。



 セントラルには、出張で来ていた。例によって、エドの機械鎧が壊れたのだ。

 …何やってるんだか。

 まずはどこが悪いか調べる。

 外見は…見るまでもないわね。

 あたしの可愛い機械鎧が、無残に破壊されちゃってる…。

 全てを作り直す時間もないから、悪いヶ所だけを取り替える事にした。

 実に効率的だ。

「熱が籠もってるわね」

「内部が熱いんだ」

「中でショートしてるのかも知れないわ」

 さっそく解体してテスターであたる。

 ピーと言う電子音と共に、抵抗値が無限大〔オーム〕を示した。
 これは、電流が流れてないか、流れすぎてるかのどちらかだ。

「やっぱりね。この配線ショートしてるわ」

「こっちも見てくれ。指も動かないんだ」

「そこも?シンクロで見てみる」

 信号が来ていない。図面を見ながら、基板のICのピンを見ていく。

 これ?この部品だわ。チップセレクト信号を、FPGAが出してない。

 動かないハズだ。命令が出されてないんだもの。

 え?それは何かって?

 ようするに、どの指を動かすか命令を出す機関がぶち壊れてるって事よ。

 ショートしている配線と、IC部品を取り外して、新しい部品に半田付けを施していく。

 あたしは機械鎧技師だ。 検査技師じゃない。

 けれど、今の世の中それだけじゃやっていけない。

 こいつらと付き合うのは、特にそれ以上を求められるのだ。

 ノギスで計り、慎重に削っていく。一ミリの誤差も許されない。ここは、精密さが求められるのだ。

 失敗すれば、装着時に巧く填まらなくなる。

 小型モータには、ベアリングを取り付けた。これがないと、腕が人間の様滑らかに動かないのだ。


「ふう…」

 額から流れ出る汗を拭った。

 もう大丈夫。

 あとは、スパナでネジを締めて終わりだ。同じ力量でやらなければならないので、締めるだけでも結構コツがいるんだけど。

「よし!さあ、装着してみて!!」

「うぇぇ」

 エドが盛大に嫌な顔をしたが、あたしは見ないフリをした。

「…機械鎧も、錬成出来りゃあ良いのにな」

「真理を見たら何でも出来ると思ったけど、違うんだよね」

 アルが残念そうに言う。

「まあな、あれは意識として感じるものだもんな」

 エドが腕を回しながらそれに答えた。

「錬成なんかされてたまるもんですか」

 あたしのたった一つの誇りを、誰にも奪わせたりしない。 
 
 そう言って、とびきりの笑顔で微笑んでみせた。
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