始まりの世界

□初詣
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※アンク視点
…結希の奴。
たかだか天ぷら1つでプレミアムアイス禁止命令を出しやがった。
アイスが禁止でないだけ、映司の時より遥かにマシだが、プレミアムアイスも食いたい。
「…買うか」
普段、アイスを買う金は渡されているので、[アンク用に]と渡されている金はあまり減ることが無い。服と一緒に買った赤い長財布の残高を見る。
充分足りる事を確認し、窓から出ようとした時。
〜♪
スマホの着信音。
ディスプレイには、[釜田翔平]の文字。
…アイツに無理矢理入れられたんだった。
「…チッ」
この忙しい時に。
盛大に舌打ちしながらも、アンクは画面をスライドした。
『もしもし〜あけおめ!起きてるか?』
真夜中でもテンションの高いキンキン声に顔をしかめる。
「…わざわざ呼んだのは挨拶だけか」
『んな訳無いだろ!お前らさぁ、初詣行ったか?』
「初詣?」
そういえば、1度だけ映司と比奈に連れられて行った覚えがある。寒い中わざわざ小銭を箱に放り込むだけに並んだ覚えしかないが。
『母ちゃんが一緒に行こうってさ〜』
…千賀子、とか言う女の事か。
「そっちで勝手に行ってろ。俺は今…」
アイスを買いに、と言おうとしたのを遮る様に翔平が言った。
『一緒に行ってくれたらプレミアムアイス一箱だって母ちゃんが』
「…行く」
これで問題なく食える。アイツの「はぁ!?」と言う光景が目に浮かぶ。
『じゃ、今からそっちに行くから』
迎えに来るらしい事を了承し、アンクは通話の切れたスマホをポケットに突っ込んで結希の部屋に向かった。
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